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2026.02.24 11:16

なぜAI導入は進まないのか? リーダーが自問すべき3つの質問

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多くの組織はAI導入を「テクノロジーの展開」として扱いがちで、「人」と「文化」の課題として捉えていない。この理解は、AIの変革的な能力を引き出すうえで決定的に重要である。Udacityが751人のナレッジワーカーとリーダーを対象に実施した最新調査は、AIの変革的価値を実現するために既存社員をスキルアップさせる重要性を示している。同調査によれば、回答者の67%は、AIスキルを持つ人材を採用するために25%の給与プレミアムを支払うより、既存社員1人のスキル向上に5000ドルを投資するほうを望むという。リーダーは、外部採用が高コストであるだけでなく、AIの出力を十分に理解するために必要な組織的文脈を欠くことが多い点も認識している。こうした背景が、社内能力の構築を重要な戦略投資にしている。

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なぜ「採用」ではなく「育成」戦略を選ぶべきなのか

AI人材を「買う」のではなく「育てる」というこのコミットメントは、レディネスギャップの拡大を浮き彫りにしている。テクノロジー導入のスピードが、従業員がAIを日常業務に統合する能力を上回っているのだ。その影響は明らかである。労働者の79%が職場でAIを使う準備ができていないと感じており、65%が組織から適切なトレーニングを受けていないと回答している。リーダーにとっての課題は、従業員がAIを活用できない真の原因を特定することである。それはトレーニングへのアクセスの問題なのか、トレーニング内容の適切性の問題なのか、あるいはより広範な文化的・組織的障壁なのか。そのうえで、人間とデジタルの両方からなるワークフォースを率いるリーダーの責任を明確にする必要がある。

リーダーがワークフォースのAI活用準備状況を評価する前に、まずビジネス価値と、導入の説得力ある「なぜ」を確立しなければならない。あまりに多くの場合、リーダーたちは採用の迅速化からコーチングの民主化まで、あらゆることを約束する派手なデモンストレーションを提示される。

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本当に必要なのは、ビジネス価値と実現可能性を照合し、人事、IT、財務、法務、事業部門のリーダーが共同で作り上げる、厳密なユースケース優先順位付けモデルである。この連携が整って初めて、人事は導入をどう加速させるかを有意義に検討できるようになる。

リーダーにとっての出発点の1つは、ワークフォースがAIを使う準備ができているかを点検し、チームに対して3つの質問を投げかけることだ。

AI導入を加速するためにリーダーが問うべき3つの質問

1. 従業員のマインドセットを理解しているか? 何が職務でのAI活用を妨げているのか

AIの人間的側面は、リーダーに見過ごされがちである。ここで言う人間的側面とは、従業員が感じる役割の陳腐化への恐怖のことだ。私は以前、Forbesのコラムでこれを「FOBO(fear of being obsolete=時代遅れになることへの恐怖)」と表現した。AIの使い方に関するトレーニングを受けても、AIへの接触が増えることで、こうした懸念はむしろ高まることがある。Pew Researchが5000人以上の働く成人を対象に実施した調査では、52%が職場でのAI利用拡大を懸念しており、希望を感じていると答えたのはわずか36%だった。

では、従業員は具体的に何を不安に思っているのか。私見では、多くの人がAIリテラシーを示せるかどうかを懸念している。現在の職務においても、将来のキャリア機会においても同様である。AIリテラシーを基礎的な能力として求めるCEOが増えるにつれ、従業員はペースについていけるかという不安を強めている。

CEOはAI利用に関してリーダーシップを発揮する必要がある。号令を出すだけでなく、学習と実験の文化を築かねばならない。Avatureの創業者兼CEOであるディミトリ・ボイランはこう語る。「CEOとビジネスリーダーはAI変革を主導しなければならない。ボトムアップのアプローチではないし、そうあるべきでもない。今日、AIの最も大きなリターンは、生産性の向上、従業員と顧客の体験の改善、より良い意思決定の支援に集中している。しかし、リーダーがAIで競争優位を得るには、組織の焦点をAIによるイノベーションと新しいビジネスモデルの創出に向ける必要がある。そのためには、CEOが『最高実験責任者』として、AIを活用する新しい方法を自ら体現することが求められる」

2. 画一的なAIトレーニングではなく、役割別のAIトレーニングを実施しているか

スキル不足は依然としてAI導入の主要な障壁である。Avatureが180人の人事リーダーを対象に行った調査では、48%がAIが組織全体に広がるなかで重要な役割を担うために必要な能力の発見・開発に苦労している。同時に、今後1年で必要となるスキルを予測できると自信を持つのは11%にすぎない。

あまりに多くの組織が、このギャップを画一的なAIトレーニングで埋めようとする。多くは大規模に実施されるAIコンプライアンス研修である。しかし、AIリテラシーはコンプライアンスの問題ではなく、能力の問題である。企業は、個々の従業員のニーズ、責任、業務目標に沿った役割別のAIトレーニングに投資すべきだ。

すでに先行する組織もある。IBMはこのアプローチを「AI ways of working roadmap」と呼び、従業員が自分の職務文脈の中でAIエージェントと協働する方法を学べるようにしている。Indeedも役割別のAIトレーニングに焦点を当てた同様の戦略を採用し、測定可能な成果を上げている。現在、同社のエンジニアリングチームの85%以上が毎週AIコーディングツールを使用しており、コード品質を維持しながら生産性を20%向上させたという。

対象を絞った役割別トレーニングは、従業員がAIをワークフローに統合し、新たなユースケースを試すことを可能にする。汎用的で広範なプログラムよりも、はるかに効果的に導入を加速させる。

3. 人間とAIのチームを率いることができる、思いやりあるリーダーを育てているか

リーダーシップは、その本質において、きわめて人間的な営みである。人間とAIエージェントが統合チームとして並走するようになれば、リーダーシップの重要性はこれまで以上に高まる。リーダーはまず、AIを戦略的優先事項として位置づける明確なビジョンを伝えなければならない。Udacityの調査は大きなコミュニケーションギャップを示している。751人の回答者のうち、リーダーシップが将来に向けた明確なビジョンを共有していると考えるのは18%にとどまった。

このコミュニケーションギャップを埋めるだけでなく、リーダーはAIが企業全体に拡大するなかで高まる従業員の燃え尽き症候群にも対処しなければならない。Moodleの最近の調査によると、2025年に従業員の66%が何らかの燃え尽き症候群を経験した。その影響は特に若い労働者、つまり「未来のワークフォース」に顕著であり、18〜24歳の81%、25〜34歳の83%が職場での燃え尽きを報告している。そしてZ世代の労働者の約3分の1が、AIツールが自分の役割の一部を代替するかもしれないという懸念を強めている。これはX世代の労働者(8%)の3倍の水準である。

これらのプレッシャーは、リーダーに新たな課題を突きつけている。職務の陳腐化への恐れに対処し、AIトレーニングのギャップを埋めるだけでなく、人間とAIの両方の貢献者のパフォーマンスを管理・評価する方法を学ばなければならないのだ。Udacityの調査は、「理想的な」チーム構成として、人間が65%にとどまり、AIエージェントが能力の約20%を担うようになる可能性を予測している。AIの比率は、2025年初頭の約8%から、2026年末には約20%へと倍増する見込みだ。

従業員がAI生成のアウトプットを監督し検証する時間が増えるほど、新たなチームメンバーとしてAIと働くことによるストレスは高まる可能性がある。リーダーはこれを理解し、企業全体にAIが広がる中で従業員が抱く不安に対処するため、人的な思いやりとデジタルリテラシーのバランスを取る必要がある。

forbes.com 原文

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