起業家

2026.03.01 15:00

東京で起業した日本最大級の再エネ開発者、テキサスで全米最大の「AI向け電力拠点」構築に挑む

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“自前の電力網”として設計し、送電網から調達する電力よりも安く供給できる可能性

この構想を現実のものにするための鍵の1つが、フランクリンが当初からGWランチを、テキサス州の電力信頼性評議会(ERCOT)が運営する送電網に頼らない“自前の電力網”として設計したことだ。ヒューストン大学でエネルギー経済学を教えるエド・ハースは、これを「賢明な選択だ」と評価する。

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ハースによれば、パシフィコはERCOTの送電料金や地元電力会社の固定費用を回避できるため、州の送電網から調達する電力よりも1キロワット時あたり10セント安く供給できる可能性があるという。AIの電力需要が急増し、建設競争も激化する中、ERCOTへの接続待ちを回避できるため、着工までの期間を約1年短縮できる見込みだ。テキサス州の電力当局は、新設データセンターによる州全体の電力需要が2031年までに10倍に拡大し、24ギガワットに達すると予測している。

テキサス州でオフグリッド電源構想を競う、注目のライバル企業

テキサス州でデータセンター向けにオフグリッド電源を構想するのはパシフィコだけではない。シェブロンはパーミアン盆地で2.5ギガワットのガス火力発電所を計画しており、テキサス中部では1.2ギガワット規模のサンドウ・レイクス発電所、サンマルコスでは1ギガワットのヘイズ・エナジー発電所が進められている。ただし、いずれもパシフィコが構想する最大7.5ギガワット規模と比べれば、発電能力は半分以下にとどまる。

パシフィコの最大の競合として注目される発電所が、ダラス本拠のフェルミ・アメリカがテキサス州アマリロで建設を進める「ドナルド・J・トランプ発電所」だ。この施設は、核弾頭用プルトニウム・ピットを製造する米エネルギー省のパンテックス工場に隣接している。フェルミは2025年の新規株式公開(IPO)で6億8000万ドル(約1054億円)を調達し、時価総額は一時200億ドル(約3.1兆円)に急騰した。その結果、創業者のトビー・ノイゲバウアーとグリフィン・ペリーの2人は一時ビリオネアとなったが、現在の時価総額は50億ドル(約7750億円)まで縮小している。

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フェルミは、11ギガワット規模の新設原子炉を建設する計画で注目を集めたが、その実現には少なくとも10年を要する見通しだ。同社は当面の対応として、総額100億ドル(約1.6兆円)超を投じる6ギガワット規模の天然ガスタービン計画を進めており、2月初旬には最初のシーメンス製タービンがヒューストン港に到着したと発表した。ところがその数日後に同社は、テキサス州環境品質委員会からの許認可が最終確定していないことを理由に、アマリロでの建設作業を一時停止すると明らかにした(同委員会はすでにGWランチの建設を承認している)。

テキサス州のデータセンター案件に関心を示す三菱UFJ銀行が、これまでにフェルミへ5億ドル(約775億円)を融資していることも、フランクリンとパシフィコにとって追い風になり得る。もっともフランクリンは、フェルミを直接の競合とは見ていない。米国ではAI向け電力需要が急増しており、同様のプロジェクトはいくつあっても足りないからだという。

競合とは対照的に原子力発電を検討せず、需要の拡大に注視しプロジェクトを推進

フランクリンは、フェルミとは対照的に、現時点で原子力発電を検討していない。また、GWランチの発表に際しては、排出許可をすべて取得するまで公表を控えた点も異なる。「将来的な拡張を前提に規模拡大をうたう事業者もいるが、それが実現する保証はない」と彼は語る。

実際、データセンター建設の拡大にブレーキをかけようとする動きもある。米国の6州が禁止や一時停止措置を検討しており、ニューヨーク州では新設を3年間停止する案が浮上している。また、バーニー・サンダース上院議員は、データセンターの新規建設を全米で一時停止すべきだと訴えているが、フランクリンはそこまでの包括的な禁止措置が実現する可能性は低いと見る。彼が注視しているのは、あくまで需要の拡大だ。

フランクリンは、現状のAI導入の加速を、かつてのAOLによるダイヤルアップ接続時代のインターネットに例えている。「これは前例のない負荷の増大だ。これから押し寄せる規模とスピードに対応するには、1つや2つのプロジェクトでは到底足りない」と彼は語った。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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