経済・社会

2026.02.24 17:15

爆弾酒20杯、閣下と呼んでこびる側近 尹錫悦がはまった権力の罠

ビールに強い酒の入ったショットグラスを沈める韓国のカクテル「爆弾酒(ポクタンジュ)」(tangmo.pa - stock.abobe.com)

ビールに強い酒の入ったショットグラスを沈める韓国のカクテル「爆弾酒(ポクタンジュ)」(tangmo.pa - stock.abobe.com)

2024年12月の戒厳令宣布を巡り、ソウル中央地裁は19日、内乱を首謀した罪などに問われて死刑を求刑された尹錫悦前大統領に、無期懲役の判決を言い渡した。尹被告の側近だった人物は「絶妙な判決だったと思う」と語る。「(同じ内乱罪で、一審で死刑判決を受けた)全斗煥とは状況が違う。あのとき(光州事件)は、200人以上が亡くなった。今回は、死者が出なかったことが不幸中の幸いだった。これなら、保守も進歩(革新)もブツブツ文句は言うが、大きな反発は出ない。国民の分裂を避けるうえで良かった」(同)。

advertisement

それにしても、戦時でもないのに戒厳令を宣布すれば、どういうことになるのか、正常な人間ならわかりそうなものだ。尹被告は事前に平壌などに無人機(ドローン)を飛ばして北朝鮮を挑発し、戒厳令に必要な状況を作り出そうとしていた。自分も、戒厳令にふさわしい状況ではないことを認識していたわけだ。

なぜ、韓国検察トップまで務めた人物が正常な判断を下せなかったのか。元側近は「それが韓国大統領の陥る権力の罠なのだ」と語る。韓国の大統領は就任して2年も経つと人が変わるという。就任直後は側近の意見を素直に聞いていたのに、やがて自分の考えと異なると怒り出すか、無視するようになる。韓国大統領の権力は絶大だから、誰も逆らわない。ますます独善的になる。

韓国映画では、かつての朴正熙政権時代、大統領を「閣下」と呼ぶシーンが出てくる。元側近によれば、尹政権当時はほとんどの人が「大統領様(デトンリョンニム)」と呼んでいたが、「閣下」と呼ぶ人物もいた。政治家だけではなく、政府当局者の中にもいたという。尹被告と2人だけの席ならまだしも、公の会議などの席でも、これ見よがしに「閣下」と呼ぶ。尹被告はたしなめるわけでもなく、気持ちよさそうに聞いていたという。政治経験が不足していたことも影響したのかもしれない。

advertisement

尹被告は酒好きだったが、当時の野党との政治対立が激しくなるにつれ、酒量も増えていった。酒は「爆弾酒」一択だった。尹被告と会食した元閣僚によれば、尹被告は焼酎をショットグラスになみなみと注ぎ、ビールと混ぜ合わせた。それを平均、20杯ほど飲んだという。元閣僚は「いつも、最後の方はフラフラになった。帰りの車の後部座席に倒れるように座ると、いつもそこで意識を失った」と語っていた。尹被告は24年春くらいから、酒席で「戒厳令」と口走り始めたという。今振り返ってみれば、本気だったわけだが、極秘の話を酔って口走るところにも、権力のおごりを感じる。

次ページ > 同じ悲劇は繰り返されるのか

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事