経営・戦略

2026.02.28 16:00

音楽は「安定したキャッシュフロー」を生む資産、30%超のリターンを上げた黒人女性投資家

HarbourView Equity Partnersの創業者兼CEOシェレス・クラーク(Photo by Chad Salvador/Billboard via Getty Images)

HarbourView Equity Partnersの創業者兼CEOシェレス・クラーク(Photo by Chad Salvador/Billboard via Getty Images)

米国では近年、音楽のストリーミング配信が定着した。それに伴い、過去のヒット曲の原盤権・出版権といった権利をまとめた「音楽カタログ(楽曲資産)」が、安定した収益を生むオルタナティブ資産として機関投資家の熱い視線を集めている。音楽カタログは、文化的側面だけでなく、ストリーミング収益、映画・ドラマ・CM・ゲームで使用される際に支払われるシンクロ権使用料、放送・演奏使用料などにより、景気変動に左右されにくい「安定したキャッシュフロー」を生む資産と見なされているためだ。

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数ある投資会社の中でも、米資産運用会社HarbourView Equity Partners(ハーバービュー・エクイティ・パートナーズ)は、この市場で際立った存在感を示している。同社は、ブルーノ・マーズ、ジャスティン・ビーバーなど、著名アーティストの音楽カタログを次々と取得し、巨額の利益を上げてきた。

同社の創業者兼CEOであるシェレス・クラーク(49)は、マイノリティや女性の進出がまだ限られている米国の投資業界において、自ら巨大ファンドを立ち上げた数少ない黒人女性の1人だ。彼女は現在、音楽ビジネスで証明した「ポップカルチャーの資産化」という手法を、映画・テレビ・スポーツといった分野にも拡大しようとしている。

運用資産約1550億円の会社が、売却額約4650億円のケーブルネットワークを買収するため入札

2023年初め、シェレス・クラークは、黒人向けケーブルテレビ局BETの買収に向けて動いていることを、投資大手GCMグローブナーの当時副会長だったデレク・ジョーンズに伝えた。クラークは、ニュージャージー州ニューアークに拠点を置くオルタナティブ資産運用会社ハーバービューの創業者だ。

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クラークのメンターだったジョーンズは、その野心的な試みに感銘を受けたが、同時に懐疑的な目で見ていた。当時のBETの親会社パラマウント・グローバルは30億ドル(約4650億円。1ドル=155円換算)での売却を目指しており、タイラー・ペリーやシャキール・オニールなどの大物も入札したが、提示額がそれに満たないとして退けられていたからだ。

当時のハーバービューの運用資産は約10億ドル(約1550億円)にとどまっていた。ジョーンズは「小魚がクジラを飲み込もうとしている」と冗談めかして言ったという。「私がそう言ったら、彼女はむっとした」と彼は振り返るが、クラークは、結局はそれを笑い話に変えた。「次に彼に会ったとき、私はこう言ったの。『こんにちは。私の名前はミノー(小魚)です』と」と、クラークはフォーブスに語る。

「私は大きな夢を見ることをためらわない。BETが売りに出ていると聞いて、だったら挑戦してみようと思った。我々では駄目だなんて思いもしなかった」と彼女は続けた。

一流の音楽カタログを取得する大胆な戦略により、運用資産が約4185億円に到達

それから3年後、クラークはもはや小魚などではない。彼女が率いるハーバービューの運用資産は、27億ドル(約4185億円)に拡大した。その原動力となったのは、大物アーティストの音楽カタログを積極的に取得する大胆な戦略だ。その内訳には、ブルーノ・マーズのソングライター兼プロデューサーであるジェームズ・フォントルロイやネリー、ジャスティン・ビーバー、フリートウッド・マック、ケリー・クラークソン、ファット・ジョー、Tペインが含まれる。クラークはまた、フォーブスが黒人のトップ投資家を選出するランキング「ForbesBLK 50: Money Masters」2026年版にも名を連ねている。

「私は、次のロバート・スミスになろうとしている」とクラークは語り、著名な黒人ビリオネアの名前を挙げた。ヴィスタ・エクイティ・パートナーズの創業者であるスミスは、エンタープライズ向けソフトウェアを軸にプライベートエクイティ事業を築いたことで知られる。「我々はそれをカルチャーの分野でやっている」と彼女は語る。

3万5000曲以上を含む70超の音楽カタログを保有

ハーバービューは現在、3万5000曲以上を含む70超の音楽カタログを保有している。資金面では、アポロやKKRといった金融大手が同社を支えている。クラークの経歴を際立たせているのは、ハーバービューがこの分野で活動する数少ない黒人オーナー企業の1つである点だ。投資会社Fairview Capital Partnersが2024年に公表した報告書によると、米国には女性やマイノリティが所有するプライベートエクイティおよびベンチャーキャピタル会社が1000社以上あるが、そのうち黒人オーナー企業は168社にとどまるという。

「投資家になるというのは、実はそんなに特別なことではない」とクラークは語る。「大事なのは、自分なりの考えを持って、誰と組むかをきちんと見極めることだ。そこで求められるのは、掛け算、割り算、足し算、引き算といった、我々の多くが小学生のころ身に付けている知識だ」。

次ページ > 音楽カタログから収益を生み出し、数十年にわたって有利なリターンを提供

翻訳=上田裕資

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