厳しい現実を述べよう。ほとんどの企業には単一の頭脳が存在しない。数十もの頭脳が分散しているのだ。大企業に対して、たとえば顧客への割引承認やローン審査の可否といった単一の意思決定がどのように行われているかを説明してもらうと、システム、ファイル、承認プロセスが入り乱れた説明が返ってくるだろう。しかもそれらは、どうにもつじつまが合わないのである。
この問題を紐解いていこう。
日常的な意思決定に潜む「見えない設計」を見る
成長を重ねるうちに、新しい製品、地域、コンプライアンス規則の追加は、それぞれがコードに痕跡を残す。チームは適応し、近道も選ぶ。結果として生まれるのが、エンジニアが半ば冗談めかして「スパゲッティロジック」と呼ぶものだ。誰も全体を理解していないのに、誰もが触れるのを恐れる依存関係の網である。皮肉なことに、『わんわん物語』とは違い、糸が最後に交わっても、誰も同じテーブルには着かない。
意図的にそうしているわけではない。1:1で生存戦略なのだ。チームは日々、目の前の問題を解くことに追われ、プレッシャーのなかで最善を尽くし、たいていは孤軍奮闘している。問題は、小さな不整合が複利的に積み上がり、何かが壊れるまで気づけないことが多い点である。価格設定チームは「割引適用可」をある定義で扱い、財務は別の計算式を使い、決済エンジンは独自のロジックを適用する──その結果、売上監査で、理論上は全員が正しく、全体としては誤っていたことが明らかになる。
理屈の上では、企業のデジタルシステムは「ビジネスがどう考えているか」を明確にするはずだ。だが現実には、ロジックはかなりの程度まで隠れていることが多い。意思決定がコードの中に埋め込まれていると、ビジネスチームは結果がどのように生み出されているのかを理解できなくなる。すると静かな依存関係が生まれる。ルールがどこに存在するのかわからないため、人々はルールに疑問を抱かなくなるのだ。明らかに客観的に見て古くなった価格ルールであっても、下流(後続プロセス)で何が起きるか誰もわからないという理由だけで、マネジャーが変更をためらう光景は珍しくない。
それはリスク管理なのか。おそらくそういう面もある。だが私は、多くの場合それは「麻痺が別の顔をしている」だけだと考えている。
言語としてのロジックを取り戻す
こうした問題を解決する最善策は、透明性だと私は考える。意思決定ロジックを、ビジネス側と技術側の双方が読めて議論できる、明確で共有された形式で伝えられれば、ブラックボックスであることをやめ、企業が学び、進化するための「生きた要素」になり得る。自動化は維持できる。だが今度は説明もできる。意思決定をそのルールまで遡り、いつ変更されたのかを確認し、「なぜ」を理解できる。自分たちが構築したものを、実際に理解するという単純な行為である。
「スパゲッティロジック」から戦略的明快さへ移行するために、意思決定ロジックが明確で共有された形式で伝達されることを担保し得る3つのステップを提案したい。
1. ビジュアルインターフェースを活用する。ハードコード(コードに直書きすること)されたスクリプトを使うのではなく、整理されたビジュアルインターフェース上で業務ルールをモデル化する。プロセスを可視化する際は、ビジュアルキャンバスを用いて意思決定の順序と依存関係のアーキテクチャ(構造)を図式化する。
2. デシジョンテーブル(決定表)とAI支援オーサリングで標準化する。デシジョンテーブルを使い、ユーザーが自らのロジックと重要指標を即座に参照できるようにする。平易な言葉のプロンプトから、AIアシスタントにこれらのテーブルを作らせることも可能だ。前提となる文脈が最初から明確であることを確保したい。
3. 承認ワークフローを中央集約する。Jira、Asana、Monday.com、ServiceNowのようなツールとロジック管理を統合し、ルール承認を自動化し、記録する。私の経験では、これにより、あらゆる変更が正式に承認され、責任の所在が明確な「紙の証跡(監査可能な記録)」が残るようになる。
現代的な意思決定管理の環境では、これらの形式は通常、対話型のビジュアルフロー、デシジョンテーブル、そして融資承認、旅行保険の算定、動的価格設定(dynamic pricing)のような一般的な業界ニーズに向けた既成テンプレートとして具現化する。
私の経験では、この段階に到達した企業は、自動化をバズワードや抽象的な言葉で語らなくなる。代わりに「オーナーシップ(責任と権限の所在)」を語り始める。各ルールを誰が定義し、誰が承認し、誰が変更できるのかがわかる。リリースサイクルを待つことなく、シナリオを実行し、ポリシー(運用方針)をテストし、適応できる。
それこそが、意思決定インテリジェンスであるべき姿だ。市場の変化と同じ速度で考えを変えられるだけの知識を持ち、整合性(あるいは平静さ)を失わないこと。そしてそれが実現すると、もう1つの変化が起きる。人々が再び自社のシステムを信頼し始めるのだ。
要点
どの企業もスピードを求める。だが共有された理解を欠いたスピードは、むしろ幻想に近い。明快さは自動化を戦略へと変え、理解しづらい無数の小さなルールを、ビジネスがどう考えているかを実際に表現するシステムへと転換する。だからこそ、誰の目にも見えるロジックでシステムを動かしているかを確認してほしい。



