遠い紛争ではなく、最前線そのもの
ロシアは米国にとって、遠く離れた地域の厄介者ではない。ベーリング海峡を隔てて米国と海上国境を接し、米国や西側諸国と対峙する姿勢を公然と示している。ウクライナ戦争は、西側の産業力、情報連携、同盟の結束力、政治的意志を試す実験場となってきた。
米国の決意の揺らぎは、モスクワだけでなく北京や平壌、テヘランにも注視されている。武力による国境変更が欧州において可能なら、それは欧州だけにとどまらない前例となる。
逆もまた然り、である。ロシアの侵略が失敗すれば、その抑止力は複数の紛争にまたがって強化される。ウクライナにおける人的損失は現実だが、支援は単なる人道的課題ではない。その帰結が世界の情勢判断に影響する戦略的対決なのである。
戦略的な収支はプラス
財政的現実主義に裏打ちされた強さを信じる人々にとって、ウクライナ戦争は結果に基づいて評価されるべきものだ。
米国のウクライナ支援の大部分は、米国内で消費された。備蓄の補充、生産ラインの拡大、兵器システムの近代化に充てられたのだ。米国の防衛産業は加速し、産業基盤は活性化した。米軍は現代戦についての貴重な知見を得た。ドローン、電子戦、ミサイル防衛、そして「高強度紛争(high-intensity conflict)」における産業需要などである。
同時に、ロシアの通常戦力は桁外れの損失を被った。軍用装備は破壊され、精鋭部隊は深刻な損耗を受け、NATO圏への通常戦力投射能力は低下した。つまり、純粋に戦略的観点から測れば、米国のウクライナ支援は限定的な直接コストで大きな成果を生み出してきたのだ。
「制御不能な核リスク」を防げ
ウクライナ戦争が後の世に及ぼす最も重大な長期的影響は、領土問題ではなく、「核」の問題かもしれない。
核兵器の拡散、核威嚇の日常化、条約の形骸化が進めば、世界は米国の国益にとって不安定で危険なものと化す。核を用いた瀬戸際政策がいつまでも続く情勢下では、市場の繁栄は望めない。どんな協定を結ぼうとも、条件付きとみなされれば同盟関係は弱体化する。
ウクライナ支援は決して、過去の秩序への郷愁ではない。制御不能な核リスクによって未来が形作られるのを防ぐためのものだ。


