ハンナ・ケイン(ALOM社 プレジデント兼CEO)
グローバルなサプライチェーン企業のCEOとして、私は大小さまざまなサプライチェーンが稼働する現場を見ている。全米製造業者協会(National Association of Manufacturers)の理事でもあるため、サプライチェーンがあらゆる事業、特に製品ビジネスに与える影響を追っている。
パンデミック以前、私が目にしていた製造業者の多くは、生産性向上といった社内の課題に主として注力していた。しかしパンデミックによって、サプライチェーンがいかに重要かが理解されるようになった。その認識は現在も意思決定を形づくっている。いま2026年、私は水晶玉を取り出し、サプライチェーンに関する予測と、来年にリーダーが何を想定すべきかを共有したい。
1. 仕入先の変更
ここ数年、「チャイナ・プラス・ワン」——すなわち各部品について、中国に1社、中国以外に1社のサプライヤーを持つ——という議論が続いてきた。だが、この話はまだ終わらない。2026年には、一部の企業が「アジア・マイナス・ワン」戦略を採用する可能性があると予測する。すなわち、アジアから製品調達や委託製造を行いながら、あえて中国を避ける戦略である。例えばテスラは、米国で製造する自動車において「中国製部品を除外する」ことをサプライヤーに求めるようになったと、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。来年、他社も同様の戦略を採用するかもしれない。
ただし、このアプローチは企業にとって厳しいものになり得る。調達先から中国を外すことは、コストや俊敏性に影響するだけでなく、中国市場でのシェア獲得力にも影響し得る。
長期的には、「ワールド・マイナスX」——Xがさまざまな理由でブラックリスト化された国を表す——という形が現れる可能性があると考えている。国、企業、製品に対する制限は注視すべき重要事項だ。リスク軽減を確実にするため、いまの段階でシステムや戦略的調達を調整しておくことができる。
2. 関税
関税は今年、なくなる可能性が高いとは言い難い。ただし、2025年に見られた変動の一部は落ち着くと見ている。変動は今後も起きるだろうが、2025年にサプライチェーンの専門家が経験したほどの水準にはならないはずだ。2025年と比べれば、2026年は安定し得る。一方で、過去50年と比べるなら、2026年でも関税水準は大きく変動する可能性がある。特定の国、特定のカテゴリーや製品、あるいは特定の状況においてだ。
私の見立てでは、関税が相対的に安定する可能性がもたらす最大の影響は、企業心理にある。2025年の不確実性は多方面で悪影響を及ぼした。意思決定が止まってしまう企業を多く見たし、輸送中に関税が変動する事態を経験したことで、コスト抑制を諦めたサプライチェーンの専門家も少なくなかった。体感としても、不安定な環境が生んだストレスは明らかだった。2025年には、優秀な友人たちの多くがサプライチェーンのキャリアに終止符を打った。今年は、よりストレスの少ない年であってほしい。
3. USMCAの2026年レビュー
米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の正式な共同レビューは、2026年7月に予定されている。これは大きな出来事だ。カナダとメキシコは米国にとって最大の貿易相手国である。協定自体の期限は2036年までだが、正式レビューは実質的な交渉になり得る。一定の駆け引きはあると予測するものの、3カ国すべてが円滑な交渉と合意形成という結果に利害を有していると考える。
4. AIが「誇大宣伝」を超える
AIは業界を問わず多くの企業に力を与え、回答の導出を促し、生産性を高めている。2026年は、ロボティクスや自動運転車・自律型デバイスの増加、接続性とデータ交換の容易化、問題解決までの時間短縮、製造および倉庫環境における新たな改善が引き続き進む年になるだろう。私の見立てでは、2026年には視覚認識と分析に基づく大きな改善に加え、予測分析や例外処理の高度化ももたらされ得る。
5. 規制の減速
規制措置がやや減速する兆しがあると考えている。米国と欧州の双方で、規制コストへの認識が高まっている。過去10年、EUは多数の新たな規制イニシアチブを立ち上げ、その一部は「企業にとって負担が大きい」と批判されてきた。例えば企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(Corporate Sustainability Due Diligence Directive)は、ケンブリッジ大学出版局が米国国際法学会(The American Society of International Law)向けに作成した報告書によれば、小規模事業者のコスト増や、「各国の管轄において人権を守ろうとする、より進歩的な取り組み」を妨げることなど、「意図せぬ結果」を招くとされてきた。
欧州委員会の報告書「欧州競争力の未来」が、企業の規制負担を減らすことが「極めて重要になる」としているように、規制は管理可能でなければならないという合意が形成されつつあるように見える。とはいえ、EUの企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)、森林破壊規制(EUDR)、炭素国境調整メカニズム(CBAM)、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)への備えを軽視してはならない。
6. すべては「人」にかかっている
労働市場は、米国でも世界的にも大きく変化した。仕事が見つかりにくくなり、レイオフがより一般的になるなかで、「ジョブ・ハギング」(今の仕事にしがみつくこと)が時代のキーワードとなっている。一方で、米国の従業員エンゲージメントは低く、ギャラップによれば、職場でエンゲージしていると答えた労働者は31%にとどまる。この数字は2020年の36%から低下している。
同時に、多くの雇用主はタスク、プロセス、俊敏性、価値について異なる考え方をするようになっている。自分の分野、ツール、変化する要件を把握しきれていない従業員、あるいは仕事への関与が十分でない従業員は、レイオフの打撃を受けるリスクがある。それでも雇用主側にも大きなリスクがある。エンゲージメントが低ければ、人材への投資を十分に生かせないからだ。このギャップを埋めることは、最大の職場課題になるかもしれず、2026年に向けてリーダーが熟考すべき論点である。
先を見据えると、ビジネスリーダーにとって今年、俊敏性を保つことが重要になる。変化のスピードが加速するなか、リーダーは世界の動きと自社内の動向の双方を追い、迅速に反応できるよう備えなければならない。しかし最終的に、2026年にあらゆるリーダーが心に留めるべき最も重要な助言は、自らの中核となる価値観に忠実であり続けることだ。



