リーダーシップ

2026.02.23 22:32

推論型AIと自律型AI より良い意思決定を実現する活用法

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クリシュナン・ラマヌジャムは、タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)のコンシューマー・ビジネス・グループ社長である。

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時代を超えて存続してきた企業を思い浮かべると、顧客ニーズを先回りして捉えること、迅速に対応すること、そして一人ひとりに寄り添うような体験を提供することなど、いくつかの重要な特徴を共有しているはずだ。

これを実現するには、従来は多大な注意力と時間、さらには多少の運も必要だった。しかしAIが登場したことで、より多くの企業が「知覚的(perceptive)」になれる機会を手にしつつある。市場シグナルを読み解き、機会が顕在化する前に見つけ、顧客のために断固として行動する能力を育むということだ。ただし私の経験では、単に市場にあるAIツールを何でも使えばよいわけではない。ここでは推論型AIと自律型AIツールに焦点を当て、リーダーがそれらをどう適用すれば、より知覚的で効率的になれるのかを詳しく見ていく。

推論型AI:データの藁山から針を見つけ出す

カスタマージャーニーは通常、店舗訪問、ウェブサイト、アプリ、ソーシャルメディアといった、物理とデジタルが混在する複雑な接点の網の目で成り立っており、そこから膨大なマルチモーダルデータが生まれる。今日の超競争市場では、固定的なダッシュボードと手作業の分析だけに頼るのは困難であり、不可能に近い場合すらある。

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推論型AI──雑然としたデータを整理し、有用な情報を適用して予測を生成するよう設計されたAIツール──は、この複雑さを企業が活用できるようにする。私の経験では、このアプローチはデータの解釈に優れ、さまざまな洞察を結びつけ、実行可能な提言を提示できる。

例えば、小売企業が品ぞろえを計画する際、効果的な推論型AIは過去の販売実績に合わせて最適化するだけではない。ある地域では製品が機能し、別の地域では失敗するのはなぜなのかを評価する。そのAIは、地域の需要シグナル、代替による影響、利益率のトレードオフ、天気予報、今後のイベントなどを勘案し、そのうえで各提案の背後にある論理を説明するよう設計されている。リアルタイムの意思決定と組み合わせれば、同じシステムが前提を継続的に再評価し、状況の変化に応じてプロモーションや在庫を時間単位で調整できる。棚が空になってから吹雪に反応するのではなく、影響を先読みし、重要な在庫を事前に迂回・再配分し、あらゆる判断を透明な因果の推論で正当化するのである。

私の経験では、推論型AIが最も力を発揮するのは、意思決定が複雑でトレードオフを伴う場合だ。例えば、利益率と供給可能性のどちらを優先するか、限られた在庫をどこに回すべきか、といった判断である。実際、判断が単純であったり、純粋に過去データにもとづくものであれば、より簡易な分析手法で十分なことが多い。

ツールを選定または設定する際は、提案がであるかだけでなく、なぜその提案に至ったのかを明確に説明できることを優先すべきだ。私の経験では、こうした取り組みが失敗するのは、企業が推論型AIをブラックボックスとして扱い、明確なユースケースもないまま全社に展開したり、何が結果に影響するのかを理解しないまま過剰なデータを投入したりするためである。

システムはまた、意味のある入力を絞り込んで活用し、必要に応じて人間が介入して判断を上書きできるよう設計されるべきだ。意思決定がうまくいかなかったときに、当事者として責任を引き受けるのではなくAIのせいにしてしまうことは、よくある落とし穴になっている。私は、影響の大きい意思決定に絞って小さく始め、透明性を求め、最終判断の責任はあくまで人間が負うことを推奨する。

自律型エージェント:より良いプロセスから、より良い選択へ

一般的な見方とは異なり、私の経験では、自動化の本当の約束は人間の要素を取り除くことでも、単にコストを削減することでもない。もちろんコスト削減が利点になることはある。新たな人間と機械のパラダイムにおいて、AIは顧客体験の向上と従業員の力の発揮にも寄与し得る。

推論型AIを原動力とする自律型AIエージェントは、特定の(しばしば単調な)タスクを担うだけでなく、複数のエージェントが連携することで、思考連鎖にもとづく推論と定量的な洞察に支えられた、より賢明な選択肢を提案することもできる。これにより、人間側の担当者はより良い意思決定が可能になり、あるいは推奨された選択肢にもとづいてエージェントが自律的に実行することもできる。

私の経験では、これによって人間の従業員は、関係構築、パーソナライズされたサービスの提供、顧客体験を創造的に高めることといった、自分たちが最も得意とする領域により多くの時間と労力を割けるようになり、利益とマージンの向上を推進できる。AIに支えられたオペレーションは、機械がより迅速で、より情報に裏打ちされた選択肢と提案を提供する一方で、人間がより良い判断力、創造性、共感を発揮できるようにするべきである。

AI施策から最大の成果を引き出す

• 測るものを変える

どのようなAIシステムを採用する場合でも、従来のアウトプット重視の人材KPIから、インパクトと成果へと軸足を移すことが重要だ。完了したタスク数で成功を測るのではなく、AIシステムが意思決定をどう改善し、時間をどう節約し、顧客の成果をどう高めているかに焦点を当てるべきである。

同時に、従業員がタスクの実行者ではなく、意思決定のスチュワード(管理者)となれるよう支援する必要がある。AIの提案を解釈し、異議を唱え、行動に移せる人材である。必要なツールとスキルをチームに備えさせることは最低条件だが、私は企業が、キャリアの進展におけるある種の要素──情緒的成熟、リスク評価、価値観にもとづいて難しい決断を下す勇気──は年単位で培われることも認識すべきだと考えている。そのため、将来のリーダーを育むために、企業が時間と資源を投じることはいまなお重要である。

• 透明性が高いほど、信頼も増す

従業員を支援し、推論にもとづく意思決定を強化する新たなツールを導入する際には、顧客が自分のデータがどのように使われ得るかについて、ますます意識を高めている点を忘れてはならない。私の経験では、AIツールとプロセスは、信頼でき、企業と消費者の双方に利益をもたらす場合にのみ機能する。

ブランドは、これらの技術を透明性をもって導入し、顧客データが体験の向上にどう使われるのかを明確に説明する責任を負う。AIガバナンスについて、平易な言葉で継続的にコミュニケーションを行い、顧客が自分のデータの利用方法について実質的な選択肢を持てるようにすべきである。

結びに

AIは今日の市場で競争するための重要なツールになったが、私の経験では、統合を成功させるには、どのツールを使い、どのように適用するかについて賢明な選択を行うことが欠かせない。変化の激しい経済環境と競争環境のなかで、ビジネスリーダーが、機械エージェントをどこにどのように導入するかを見極め、暗黙知と形式知の双方にもとづいて意思決定を符号化し、明確なKPIを確立することは、ますます重要になっている。これらは、人間の強みと信頼と調和させて進められなければならない。

forbes.com 原文

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