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2026.02.23 21:54

AIエージェントが破壊するSaaS価格モデル──ソフトウェアビジネスの転換点

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AIトランスフォーメーションが深まるにつれ、目に見えやすい生産性向上に焦点が当たりがちになっている。生成AIとAIエージェントは、仕事の進め方を確実に変えつつある。

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しかし、より重要な変化は効率性ではないと筆者は考える。ソフトウェア企業が根本的にどう事業を運営し、顧客とどう関わり、提供価値をどう価格付けするかが変わるということだ。多くの場合、価格モデルそのものが、旧来のソフトウェア・ビジネスモデルが崩れ始めていることを示す最も明確なシグナルになるだろう。

AIがソフトウェア企業の構造に挑む理由

表面的には、AIはソフトウェアの開発と保守の方法を変える。コード生成、テスト、保守はより速く、より安価になる。生産性は上がり、ソフトウェアの開発・保守コストは大幅に低下するはずだ。それ自体は重要だが、多くのソフトウェア企業の運営のあり方を根本的に変えるものではない。

より深い課題は、AIエージェントがテクノロジースタックを再編し、さらに重要なことに、ソフトウェア提供企業と顧客との関係を組み替えていく点にある。ここで従来のオペレーティングモデルに歪みが生じ始める。

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AIエージェント時代におけるSaaS価格の限界

過去30年、ソフトウェアはオンプレミスでの導入からSaaS(Software as a Service)へと着実に移行してきた。SaaSの本質は利用形態のモデルにある。顧客は席数(seat)、ユーザー数、またはトランザクション数に応じて支払う。このモデルは、比較的安定したコードベースと、人間のユーザーとソフトウェアの明確な関係があることを前提としている。

AIエージェントは、その前提を崩す。こうしたシステムははるかに動的で、継続的に進化し、各顧客の具体的な文脈に深く合わせ込まれる。既存のエンタープライズシステムの上位に位置し、それらをオーケストレーションして、人がかつて自分で行っていたタスクを実行することさえあり得る。

その世界では「席(seat)」という概念が意味を失い始める。エージェントが事実上のユーザーになるからだ。ログインする人数に基づく価格設定は恣意的になり、価値が実際にどう生み出されているかから、ますます乖離していく。

カスタマイズが周辺ではなく中核になる理由

従来のエンタープライズソフトウェアでも設定変更は可能だったが、定義された境界内でのことだった。AIエージェントのプラットフォームはそれをはるかに超える。事業環境が変化するたびに、継続的なカスタマイズ、チューニング、進化が求められる。環境は例外的にではなく、デフォルトでオーダーメイドになる。

この動的性は価格設定のジレンマを生む。価値ベース(value-based)や成果ベース(outcome-based)の価格設定が解としてしばしば提案されるが、実務上は公正に実装するのが難しい。AIプラットフォームがビジネス成果にどれだけ寄与したかを客観的に切り分けるのは難しく、その寄与を一貫して継続的にモニタリングするのはなおさら困難だ。こうしたモデルの交渉やガバナンスに伴う摩擦は大きい。

新たに台頭するハイブリッドモデル

筆者がより現実的だと見るのは、ハイブリッドの価格体系が台頭することだ。1つの要素は知的財産(IP)であり、トランザクション数、イベント数、計算強度(compute intensity)といった客観的な利用指標に基づいて価格が設定される。市場が成熟するにつれ、標準化された階層、あるいは「Tシャツサイズ」(大まかなサイズ分類)へと簡素化されていく可能性がある。

それと並んで、継続的なカスタマイズ、設定、進化を反映する動的な要素が加わる。ここでソフトウェアとサービスの従来の境界が溶け始める。

このモデルの初期シグナルはすでに見えている。パランティア(Palantir)のような企業は、プラットフォームの価格設定に加え、顧客の事業と並走してソリューションを適応・進化させるフォワードデプロイ(現場常駐型)のエンジニアリングチームを組み合わせている。これは一度きりの導入コストではなく、継続的なケイパビリティである。

ビジネスモデルの衝突

歴史的に、ソフトウェア企業とサービス企業は異なる役割を担ってきた。ソフトウェアベンダーは高い粗利を生むスケーラブルなIPに注力し、コンサルティングやシステムインテグレーション(SI)企業は特注型の低粗利の仕事を扱ってきた。AIエージェントはこの分離に挑む。

ソフトウェア企業は、コンサルティングやSIに極めて近い能力を社内に取り込む必要に迫られるかもしれない。それはコスト構造を変え、オペレーションをより動的にし、価格モデルに、ライセンスされたコードだけでなく継続的な人の関与を反映させることを求める。

同時に、サービス企業は逆方向から圧力を受ける。AIプラットフォームがより強力になるほど、価値は基盤となるIPを所有すること、あるいはコントロールすることへと移る。これにより、歴史的に分離していた2つのビジネスモデルの衝突、あるいは少なくとも深い統合の可能性が生まれる。

機能別プラットフォームが登場する

この収斂は、業務機能によって異なる形で進むとも筆者は見ている。サプライチェーン、価格設定、生産の現場は、人事(HR)や財務とは同じにはならない。現在のSoR(System of Record=基幹システム)は、比較的汎用的なプラットフォームとして機能横断で利用されている。AIエージェントは、特定のタスクと成果に合わせて設計された、より専門特化したシステムを好む。

この変化は、幅広い横断型プラットフォームに挑戦を突きつけ、既存企業にとって機会とリスクの双方を生む。適応できる企業もあるが、苦戦する企業も出てくる。

リーダーにとっての意味

ソフトウェア企業の経営幹部にとっての要点は明快だが、居心地の悪いものでもある。価格設定は、安定した製品の上に重ねるパッケージング作業として扱えなくなる。顧客とともに進化する「生きたシステム」を反映しなければならない。そのためには、オペレーティングモデル、人材構成、利益率への期待を見直す必要がある。

買い手にとっての含意も同様に重大だ。将来は、よりカスタマイズされ適応的なプラットフォームがもたらされる一方で、商取引上の関係はより複雑になる。何に対して、なぜ支払っているのかを理解することが、これまで以上に重要になる。

AIエージェントは、単なる新機能ではない。ソフトウェアがどのように作られ、売られ、維持されるかを作り替える力である。その変革が無視できなくなる場所が、価格設定なのだ。

forbes.com 原文

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