動画に宿る熱量が経済を動かす
YouTubeを利用する視聴者の目的はすでにエンターテインメントにとどまらない。知識を深めるため、趣味を広げるため、あるいは日常生活のトラブルを解決するためなど、その用途は多岐にわたっている。アフィリエイト プログラムの始動によって、国内でもYouTubeショッピング機能を活用する視聴者はさらに増えていくとみられる。
一方、今後のYouTubeの立ち位置についてカッツ氏は「ECのプラットフォームになるつもりはない」と明言する。あくまで動画プラットフォームであり、購買体験を支援する機能を拡張しているにすぎないというスタンスだ。つまり、今後もYouTubeが楽天市場や、同モールに出店するショップと直接的に競合する関係になることは想定していないという見解だ。
筆者は今回の取材を通じて、YouTubeがクリエイターと視聴者との信頼関係を深めつつ「納得感のある購買体験を提供すること」を目標に置いていることが改めてよくわかった。筆者自身、特定のクリエイターに心酔して商品を衝動買いすることは少ないが、しかし、実演販売やかつてのテレビショッピングがそうであったように、自分が関心を持っている分野の有識者や、ライフスタイルに共感するクリエイターが「本当に愛用しているもの」を熱っぽく語る言葉には、やはり強力な説得力が宿ることもよくわかる。
日本独自の「推し活」文化は、もはやひとつの巨大な経済圏に成長した感がある。山川氏も「ファンがクリエイターを応援するために消費行動を起こす文化は、YouTubeショッピングと非常に親和性が高い」と語る。
アマゾンなどの既存ECプラットフォームが「検索」と「効率」による最短距離の購買を提供してきたことに対して、YouTubeはクリエイターと視聴者による「信頼関係」に基づく、情緒的な購買体験を提示している。クリエイターというフィルターを通すことで、視聴者が購入する商品は機能や利便性を備えるツールから、ストーリー性をまとう“愛用品”に昇華する。
今後、YouTubeがエンターテインメントの枠を超え、経済活動を動かすエンジンとしても進化するのであれば、重要になるのは「誰が、どのように使っているのか」という血の通った情報だろう。単なる商品のスペックや機能の紹介に止まらず、信頼できる誰かの実体験を共有する動画こそが消費者の背中を最後に押す決定打となる。YouTubeと楽天のタッグが、日本のEC市場にどのような変化をもたらすのだろうか。今後も動向を注視したい。
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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