さらに悪いことに、論文著者たちはこう書いている。「我々の研究では、組織内で仕事と距離を置くよう推奨していると明言した管理職さえ、仕事と距離を置いた従業員を冷遇した」。「これは、一貫性を欠いて不公平であるだけでなく、燃え尽きを招く文化の温床となる」
公平を期すために言えば、「期待以上の成果」や「さらに踏み込んだ努力」が求められることは、仕事に就くずっと前の、人生の早い段階から始まっている。しかし長期的には、境界線を無視することは、個々の従業員を疲弊させるだけでなく、高い離職率、低い生産性、そして有害な企業文化につながる。
境界線の設定を持続させる
筆者が自分のキャリアをスタートさせた当時、境界線を設定する上司を見ることはまれで、ましてや、従業員に自ら境界線を設定するよう促すことはさらにまれだった。だから私が起業した時、「ワークライフバランス」が優先事項のトップにくるはずもなかった。
創業期における創業者であれば、プロジェクトを軌道に乗せるために数晩の睡眠を犠牲にし、誕生日パーティーを欠席せざるを得ないこともある、ということは否定しない。しかし、そうした苦労は一時的なものであるべきだ。ビジネスが成長したあとの標準的な働き方とするべきではない。
我が社では、境界問題の芽を摘むため、従業員が業務時間外に働く義務を感じないようにする方針を実際に導入している。週末にメールを送る文化はなく、返信すべきか悩む必要もない。有給休暇を取得する際には、スマートフォンからSlackを削除することが推奨される。
こうした方針は、我々のチームが意欲的に仕事に取り組んでいる理由の重要な部分だと私は常に認識してきたし、研究も、こうした見方を裏付けている。米国人材マネジメント協会(SHRM)が2026年に発表したレポート「Global Workplace Culture(グローバル職場文化)」では、企業の健全性を測る一つの指標は、従業員が境界線を引く意思があるかどうかだと指摘されている。
SHRMの調査によると、仕事に意欲的に取り組む従業員の75%は、仕事と私生活のあいだに明確な線引きをするよう促されたと感じているのに対し、やる気に欠ける従業員においては、その割合はわずか35%だったという。
リーダーへの信頼は、常に連絡がつくことや、従業員が聞きたがっていることを言ってくれることから生まれるものではない。ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)は、次のように書いている。「我々はコミットメントを、自己犠牲ではなく活力に満ち、集中し、貢献する準備が整った状態で臨む能力として再定義する必要がある」
リーダーが境界線を示し、それを守るようにすれば、誰もがより良い仕事を、しかもより長く続けられるようになる。ちなみに一応お伝えしておくと、私が夕食時にスマートフォンをチェックしたことは、あれ以来一度もない。


