経営・戦略

2026.02.23 14:51

ブラックストーン、1兆ドル視野に450人規模のプライベート・ウェルス部門を構築──AI人員削減懸念の中で

John Hanson Pye - stock.adobe.com

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世界最大のオルタナティブ資産運用会社であるブラックストーンは、グローバル・プライベート・ウェルス部門の人員を2026年末までに450人超へ拡大する計画だ。現在の約325人から大幅な増員となる。商品ローンチの加速、米国内の新拠点構築、RIA(登録投資顧問)やブローカー・ディーラー、退職年金プランへの浸透強化を進める。この規模が実現すれば、現在1兆2700億ドルの総資産を運用するブラックストーンは、オルタナティブ分野における最大級の専門プライベート・ウェルス部門を擁することになる。運用資産9380億ドルを持つアポロや、約7500億ドルのKKRといったライバル各社も個人投資家の獲得競争に参入しているが、この規模の専門部門構築はまだ発表していない。

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ブラックストーンの目標は野心的だ。今後数年でプライベート・ウェルスの資産残高だけで1兆ドルを目指す。同社のリテール部門は現在3020億ドルを運用しており、2023年末から27%増加。2017年のインベスター・デイで2500億ドルの目標を初めて掲げた当時の580億ドルからは5倍以上に成長している。

「我々は転換点にいる」と語るのは、ブラックストーンのグローバル・プライベート・ウェルス部門最高執行責任者で、元ブラックストーン・ヨーロッパ会長兼COOのファルハド・カリムだ。「公開市場へのアクセスは数十年前に民主化された。今がプライベート市場にとってのその瞬間だと我々は考えている」

ブラックストーンの直近の決算は、同社がなぜ自信を深めているかを如実に示している。2025年末時点で総運用資産は1兆2700億ドル、年間の資金流入額は2390億ドルに達した。個人投資家が継続的にアクセスできる設計のパーペチュアル・キャピタル・ビークル(永続型ファンド)は現在5230億ドル超を占め、手数料収入を生む運用資産の半分近くに相当する。

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カリムによれば、社内ではこの次なる章を「バージョン3.0」と位置づけているという。

バージョン1.0は、富裕層投資家にプライベートバンクを通じて従来型のドローダウン・ファンドへのアクセスを提供することだった。バージョン2.0は、不動産やプライベート・クレジット・ファンドなど、定期的な流動性を持つ永続型ビークルの台頭だった。そして今、バージョン3.0の時代が到来する。単一の投資枠ではなく、完全な資産配分に近い形で機能するよう設計されたマルチ戦略型のプライベート市場ポートフォリオだ。

「複数の戦略にわたる当社の卓越性に、シンプルな方法でどうアクセスを提供するか。それが我々が完全に注力していることだ」とカリムは語る。

ブラックストーンはすでにこうした取り組みの拡大を始めている。2024年に立ち上げたブラックストーン・プライベート・エクイティ・ストラテジーズ・ファンド(BXPE)は、2年で180億ドル規模に成長した。定期的な流動性を持つエバーグリーン型ビークルとして設計されたBXPEは、適格投資家にブラックストーン主導のバイアウトやPE投資の分散ポートフォリオへのアクセスを提供する。2025年に導入されたブラックストーン・インフラストラクチャー・ストラテジーズ(BXINFRA)は、初年度に約40億ドルを調達。データセンター、エネルギー転換プロジェクト、輸送ネットワークなどのプライベート・インフラ資産に焦点を当て、四半期ごとの限定的な流動性を備える。ブラックストーン・マルチアセット・クレジット・アンド・インカム・ファンド(BMACX)は、ダイレクト・レンディングやアセット・ベース・ファイナンスなど、同社の複数のクレジット戦略を単一の仕組みにまとめるよう設計されている。ほとんどのオルタナティブ商品と同様、これらのファンドは運用報酬を課し、場合によってはパフォーマンス連動型のインセンティブ報酬もある。報酬体系はファンドや株式クラスによって異なる。

カリムは、投資家心理が変化したと主張する。問題はもはやプライベート市場がポートフォリオに属するかどうかではなく、どの程度の割合を配分するかだ。「米国では投資可能なユニバースの80%が依然としてプライベートだ」とカリムは言う。「プライベート取引に参加しなければ、多くの機会から排除されることになる」

ブラックストーンの売り文句は、パッケージングによる分散だ。マルチ戦略型ビークルは、不動産、プライベート・クレジット、プライベート・エクイティ、インフラへのエクスポージャーを一つの仕組みに統合する。より安定したリターン、集中リスクの低減、アドバイザーの事務負担軽減を約束する。

「投資は循環的だ」とカリムは言う。「一つの場所で複数の戦略にエクスポージャーを持てば、分散が得られる。そしてボラティリティの高い市場では、それが重要になる」

この推進を支えるため、同社はサンフランシスコとマイアミに地域拠点を構築し、シカゴでのカバレッジを強化、南カリフォルニア、シアトル、ダラスなど富裕層の多い市場でのローカルプレゼンスを拡大することで、米国への投資を倍増させている。ワイヤーハウス、ブローカー・ディーラー、RIAごとに販売リーダーシップを細分化し、RIA成長を統括するために元アズーラ幹部のジェン・アベイトを採用した。カリムによれば、AIは業務の効率化に役立つものの、複雑で流動性の低い投資商品をアドバイザーや退職プランに販売するには、人的資本の削減ではなく増強が必要だという。「遠くに座って関与しないわけにはいかない」とカリムは言う。「これらの市場に入り込まなければならない」

教育は引き続き中心的な役割を担う。同社によれば、1万8000人以上のアドバイザーがブラックストーン・ユニバーシティの研修イニシアチブに参加している。これは対面カンファレンス、地域セミナー、デジタルコースワークを含む複数日にわたる教育プラットフォームで、ファイナンシャル・アドバイザーにプライベート市場の仕組み、ポートフォリオ構築、リスクを解説するよう設計されている。同社は2026年にウェビナーや一般向けプログラムを拡充する予定だ。現在、約30万人の米国の個人投資家が仲介業者を通じてブラックストーンのプライベート・ウェルス商品を保有している。

「洗練度のスペクトラムは幅広い」とカリムは言う。「非常に洗練されたアドバイザーもいれば、プライベート市場に不慣れなアドバイザーもいる。我々の仕事は、彼らがいる場所で対応することだ」

国際展開も並行して進んでいる。ブラックストーンは日本でチームを拡大しており、同地で約50人のプライベート・ウェルス専門家を目標としている。一方、欧州ではELTIF(欧州長期投資ファンド)の仕組みを活用して販売網を拡大し、投資家がより低い最低投資額でプライベート資産に標準化されたアクセスを得られるようにしている。オーストラリアでも2025年に初めて現地にプライベート・ウェルスの拠点を設けた。

最も複雑だが、おそらく最も魅力的な機会は退職口座だ。カリムによれば、従来の確定給付型年金は約30%をプライベート市場に配分できるのに対し、401(k)などの確定拠出型プランは1%程度にとどまる。このギャップは数兆ドル規模の潜在的資産を意味する。「規制環境はまだ完全には整っていない」とカリムは言う。「まだ序盤だ」

今やほぼすべての大手オルタナティブ資産運用会社が同じ獲物、つまり個人投資家を追いかけている。カリムはブラックストーンの優位性は機関投資家向けの継続性にあると主張する。「我々は40年間、機関投資家向けにこれをやってきた」と彼は言う。「同じチーム。同じ厳格さ。同じプロセス。二軍はいない」

最終的に重要な指標は人員数やプレスリリースではなく、採用状況だ。カリムは、ブラックストーン商品を1つから複数に増やすアドバイザーの数や、各地域での需要の高まりを追跡している。「アドバイザーが複数の戦略を採用しているなら、それは良い体験を得ている証拠だ」と彼は言う。

ブラックストーンのパーペチュアル・キャピタル事業は、すでに中核的な収益ドライバーとなっている。今、カリムは適切なパッケージング、人員配置、教育によって、プライベート市場がニッチな配分から個人投資家のポートフォリオの主軸へと移行できると賭けている。「これは漸進的な変化ではない」と彼は言う。「構造的な変化だ」

forbes.com 原文

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