いま多くのリーダーは、かつて人々が黎明期のインターネットを使っていたのと同じようにAIを使っている。便利な「答えを返す機械」としてだ。質問する。返答を得る。次へ進む。
効率的に感じる。先手を打っているようにも感じる。
しかし規律なく使えば、リーダーを価値ある存在たらしめている根源——判断力——を、静かに蝕んでいく。
多くのリーダーが犯している誤り
MicrosoftのWork Trend Indexは、「無限の労働日(infinite workday)」と呼ばれる現象を描写している。そこでは従業員がコアタイム中、会議、メール、チャットによって2分おきに中断される。多くの経営幹部にとって1日は、リーダーシップというよりトリアージ(優先順位付け)に近い。
だからこそ、過負荷への解決策としてリーダーがAIに手を伸ばすのも不思議ではない。受信箱、スライド資料、戦略メモにAIを向け、時間を取り戻せることを期待する。
しかしReinvention LabsのCEOで、GoogleとMcKinseyの元リーダーでもあるDan Chuparkoff(ダン・チュパーコフ)は、その捉え方では要点を外すと考えている。
「AIは第一義的にはスピードのためのツールではない」と彼は言う。「品質のためのツールだ。仕事の間違った部分を外注すれば、生産性が上がるのではない。代替されやすくなるだけだ」
彼はシンプルな例を挙げる。
同僚が長いメールを送ってくる。旧来のやり方は早い。ざっと目を通し、30秒で返信する。
新しいやり方は賢そうに見える。それをChatGPT(チャットGPT)に貼り付け、要約を頼む。返信の下書きを頼む。それをOutlookに貼り戻し、編集し、送る。
「そうすると30秒ではなく3分が過ぎている」と彼は言う。「AIを使っても速くはならない。やろうとしていることの品質が良くなるのだ」
メールはより洗練された印象になるかもしれない。だが、あなたのレバレッジ(影響力)は増えていない。
磨き上げがあなたの主要な貢献になった瞬間、あなたの役割は縮み始める。
AIが底上げするなら、リーダーは天井を引き上げるべきだ
AIの波の初期には、「AIサンドイッチ」——人間のプロンプト、AIの出力、人間のレビュー——という説明もあった。プロンプトエンジニアリングや誤り検証が最大の関心事だった頃には、それで理にかなっていた。
だがChuparkoffは、いまのリーダーシップの課題は別物だと主張する。
「仕事、とりわけソートリーダーシップ(思考のリーダーシップ)やコンテンツ生成、専門性の提供といった類いの仕事には3つのパートがある」と彼は説明する。「最初はアイデア出し、構成、下書きだ。AIは出発点を与えるのがかなり得意だ」
次に、彼が「真ん中」と呼ぶ領域が来る。
「仕事の真ん中は、その構成に自分自身の専門知を注ぎ込むところだ。そこはあなたが守るべき、とても重要な部分である」
最後は推敲だ。
「3つ目は推敲や磨き上げで、AIはそこも得意だ」
AIを最初や最後に使うこと自体は悪くない。リスクは「真ん中」を明け渡すことにある。
「すべてにAIを使っていると」とChuparkoffは言う。「ほどなく誰かが、あなたに頼む代わりにChatGPTにその仕事を頼めばいいと気づく。そしてあなたはこの方程式から排除される(仲介者として不要になる)」
リーダーが問題設定、優先順位付け、解釈を外注すると、組織は徐々に、リーダーの判断なしで回るよう訓練されていく。
なぜ「真ん中」がリーダーシップなのか
真ん中は、言い回しを整えることではない。要諦は識別眼(discernment)である。
リーダーが「何が本当に重要なのか」「どのシグナルに注意を払うべきか」「どの優先事項を前に進め、どれを待たせるか」を決める局面だ。短期的な便利さより、長期的な方向性が勝る場所でもある。
AIが強力なのは、膨大な情報からデータやテーマを統合できるからだ。だが、そうした示唆は、すでに書かれ、語られ、行われたことから導かれる。
リーダーシップには、それ以上のものが必要だ。
Chuparkoffは端的に言う。「意思決定を動かすのは、記憶と希望である」
ここが違いだ。AIは組織の歴史を背負っていない。足並みが揃わずに失敗したプロジェクトを覚えていない。四半期の数字を達成することとカルチャーを守ることの緊張の狭間に座っていない。会議室の空気がいま変わったことを察知しない。
その文脈は些末な補足ではない。仕事そのものなのだ。
だからこそ、リーダーは意図的でなければならない。AIが下書きを生成したとき、本当の問いは「文章はうまいか」ではない。「これは、私たちが学んできたこと、重要なこと、向かう先を反映しているか」だ。
誰にでも書けそうなものに読めるなら、おそらくあなたは真ん中から降りている。
Harvard Business Reviewの研究は、AIが仕事を減らすどころか強度を高めうることを示唆している。アウトプットの基準品質が上がると、期待も同時に上がる。プレゼン資料はよりシャープに見え、要約はより明瞭に聞こえる。
しかし磨き上げだけでは、方向性は生まれない。
AIが床(最低水準)を押し上げるなら、リーダーは天井(最高水準)を引き上げなければならない。そしてその仕事は真ん中で起きる。
生産性を本当に解放するのは「集中」だ
もう1つの誤解は、AIが自動的に時間を生み出すというものだ。
現実には、多くのリーダーが苦しむのはツール不足ではなく、思考のために守られた空間がないからである。会議がメールに滲み出し、メールがチャットに滲み出す。1日は反応的になっていく。
Chuparkoffは偶然それを学んだ。彼はかつて休暇を予定し、カレンダーをブロックした。旅行が流れた後も、カレンダーをブロックしたままにし、不在メッセージも残した。
「最高だった」と彼は言う。
5日間の途切れない時間によって、立て続けの通話の合間には収まりにくい種類の仕事ができた。得られた示唆は、より良いプロンプトの話ではない。守られた注意(protected attention)の話だった。
その後、彼のチームは月に1度、ノーミーティング・ウィークを導入した。最初は人々が古い習慣に戻った。だが時間とともに適応した。意思決定は改善し、オーナーシップ(当事者意識)も高まった。
要点は、すべての会社がノーミーティング・ウィークを必要とするということではない。リーダーシップが真ん中に宿るのなら、リーダーはそれが成立するよう設計しなければならない、ということだ。
それは、自分がいても付加価値が小さい会議を断ることかもしれない。定例の戦略時間をブロックし、交渉不可のものとして扱うことかもしれない。チームにAI生成の下書きだけでなく、そこに至る理由付けも求めることかもしれない。
AIはアウトプットを強化できる。しかし判断力は供給できない。
リーダーにとっての意味
思慮深く使えば、AIは強力な増幅器である。調査を加速し、コミュニケーションを明確にし、盲点を浮かび上がらせることができる。受動的に使えば、思考の静かな代替物になる。
成功するのは、AIを最も多用するリーダーではない。意図的に使うリーダーである。
AIには選択肢の生成や言葉の推敲を手伝わせる。だが方向性を形づくり、より難しい問いを立て、最終判断を引き受けるために、真ん中にしっかり留まる。
その転換は明確さから始まる。AIが属す領域と属さない領域を、チームに明示することだ。AI支援の仕事が持ち込まれたら、本人にしか見えない文脈によって何を変えたのかを問う。
時間が経てば、その習慣は依存ではなく能力を強める。
AIは今後も進化する。床は上がり続ける。
問題は、あなたの判断もそれに合わせて上がるかどうかだ。
AIは下書きし、磨き上げることはできる。リーダーシップは、その間の選択に宿る。



