経営・戦略

2026.02.22 23:13

サプライチェーンの炭素排出、「他人事」では済まなくなった

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私はサイバーセキュリティとテクノロジーの取材に多くの時間を割いているが、どの業界でも繰り返し目にするテーマの1つがサステナビリティだ。企業は、10年前なら荒唐無稽に思えただろう方法で、炭素排出量を測定し、報告し、削減するよう求められている。そしてその圧力は、政府よりもむしろ民間部門から強まっている。

確かに規制はある。カリフォルニア州は気候情報開示ルールに従う必要がある企業を3000社超と特定しており、同様の要件は州レベル、国家レベルへと拡大しつつある。だが、企業の排出に対する考え方を作り替えている真の力は政府ではない。サプライチェーンである。

最大顧客があなたの炭素に関心を持つとき

Amazon、Apple、Walmartといった企業は、再生可能エネルギーへの投資、車両の電動化、梱包の再設計など、自社のサステナビリティ・プログラムを何年もかけて築き上げてきた。しかし大企業のカーボンフットプリントの大半は自社オペレーションから生じるのではない。サプライチェーンから生じる。

これはスコープ3排出量と呼ばれ、購入先、販売先、提携先に含まれるすべての企業が関与するため、測定が最も難しい。Amazonが電力使用量の100%を再生可能エネルギーで賄い、2万4000台超の電動配送車を投入しているのは見事だが、これらはスコープ1と2の改善である。スコープ3ははるかに複雑で、注目はそこへ移りつつある。

Amazonは2019年に「The Climate Pledge」を共同設立し、2040年までにネットゼロカーボンを達成することを約束した。署名した企業は590社超にのぼる。これを後押しするため、Amazonは2024年にサプライヤー向けに脱炭素ツールを共有するリソースハブとして「Sustainability Exchange」を立ち上げ、さらにスコープ3排出量の半分超に責任を持つ主要サプライヤーに対し、脱炭素計画の提示を義務付けるようになった。

言い換えれば、Amazonのサプライヤーになりたいなら、信頼できる排出量データを示せなければならないということだ。もちろんAmazonだけではない。Appleはサプライヤーの排出に関する説明責任を何年も前から促してきた。Walmartには「Project Gigaton」イニシアチブがある。主要なバイヤーは一様に、カーボンデータを商取引上の要件にしつつある。

スプレッドシート問題

とはいえ、簡単というわけではない。多くのサプライヤー、とりわけ中堅製造業やエネルギー集約型産業の企業では、排出量報告は伝統的に手作業で、苦痛を伴うプロセスだった。誰かが公共料金の請求書をかき集め、数字をスプレッドシートに打ち込み、それをコンサルタントに渡し、求めてきた相手を満足させるレポートに仕立ててもらう。

サステナビリティ報告が「あれば望ましい」程度だった頃は、そのやり方でも通用した。しかし最大顧客が、監査に耐えうる排出量データを定期的に求め、それに基づいて購買判断を下すようになると通用しない。

これは、私がサイバーセキュリティの分野で何年も見てきた問題でもある。組織は何かをしなければならないと分かっているが、ツールが要件に追いついていない。セキュリティチームが多数のツールにまたがるデータの正規化に苦しんだのと同じように、サステナビリティチームは手作業のデータ収集に溺れ、期待値だけが上がり続けている。

難所の自動化

このギャップは、AIを活用したカーボンおよびエネルギー管理プラットフォーム「Gravity」による最近の発表を理解する手がかりになる。Gravityは、Amazonサプライヤー向けの推奨排出量測定ツールとして、AmazonのSustainability Exchangeに参加したことを明らかにした。

「AmazonのSustainability Exchangeは、世界のサプライチェーン全体で私たちが目にしている、より大きな変化を反映している。排出量開示は、中核的な事業要件になりつつある」と、サレー・エルハタブは説明する。彼はGravityの創業者兼CEOである。「パートナーがGravityに目を向けるケースが増えている。自社とサプライチェーンにとって、開示作業が単なる苦痛な雑務に終わらないようにするためだ。私たちはそれを管理可能にし、コスト削減の強力な手段にする」

Gravityは、カーボン会計の自動化を目指すプラットフォームが増えるなかの1社である。2022年に設立された同社は2025年初頭にシリーズAで1300万ドル(約19億5000万円)を調達し、AIでスコープ1、2、3のデータ収集を自動化しているという。独立系リサーチ企業Verdantixもこのアプローチに注目している。「Gravityは、AIを用いてデータ収集を効率化し、データ品質を高めるベンダーとして際立っていた」と、アレッサンドラ・レッジェーリは語る。彼女はVerdantixの業界アナリスト(ネットゼロおよびエネルギー移行担当)である。「同社は生成AIで公共料金の請求書や燃料の請求書データを読み取り、取り込む一方、エージェント型AIで公開データを収集し、スコープ3排出量計算の精度向上にも用いている」

エルハタブは、Amazonとの関係をオペレーション面の言葉で位置づけた。「この提携は、Amazonのサプライヤーにとってエネルギー支出を最適化し、効率を高め、オペレーションを強化する」と彼は述べた。

特定ベンダーの話にとどまらない

もちろんGravityだけがこの問題に取り組んでいるわけではない。カーボン管理ソフトウェア市場は大きく成長し、公共料金データの取り込みからスコープ3のサプライチェーン計算まで、あらゆる自動化をめぐってプラットフォームが競い合っている。AmazonがSustainability Exchangeを通じて特定のツールを推奨していることが注目に値するのは、個々のベンダーの問題というより、排出量報告が任意から「求められるもの」へとどれほど移ったかを示しているからだ。

ビジネスに関わるあらゆること、とりわけテクノロジーに関しては、注視すべき要素が2つある。1つは、これらのプラットフォームが主要バイヤーの求める規模で、正確で監査可能なデータを提供できるかどうか。もう1つは、そのデータを業務上の価値へと結びつけられるかどうかだ。つまり、排出量とコストの削減に企業を導けるのか、それともただ数えるだけに終わるのか、である。

私は長くテクノロジーを取材してきたので、プラットフォームが約束するものと実際に提供するものの間に大きな隔たりが生まれ得ることは理解している。だが現時点での流れはかなり明白だ。サプライチェーン排出は、もはや誰か他人の問題ではない。世界最大のバイヤーと取引を続けたい企業は、カーボンの測定と報告を解決しなければならない。ツールは成熟しつつある。いま投資する企業は、依然としてスプレッドシートと善意に頼る企業よりも有利な立場に立つだろう。

forbes.com 原文

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