リーダーシップ

2026.02.22 17:51

生産性の罠:AIに奪われる「判断力」という組織の競争力

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生産性ダッシュボードには、リーダーが見たいものが正確に表示される。アウトプットは増え、応答時間は短縮され、全体として効率化が進む。しかし、その同じダッシュボードでは測れないものがある。AIがタスクを処理するたびに、判断力が見えない形で引き出されているという事実だ。そして、組織はその蓄えが完全に尽きる前に手を打たねばならない。

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Microsoft Researchとカーネギーメロン大学による画期的な研究は、AI主導の生産性向上を追い求めるあらゆる経営幹部を立ち止まらせるはずだ。319人のナレッジワーカーを対象にした調査で、研究者は一貫して憂慮すべきパターンを見いだした。従業員がAIのタスク遂行能力に自信を置くほど、その成果に対して批判的思考を働かせなくなるのである。これは認識の問題でも、チェンジマネジメント上の課題でもない。高い成果を出す組織と、ただ実行するだけの組織を分ける中核的な能力そのものが、構造的に侵食されているということだ。そして、人間の判断をめぐる意図的な設計なしにAIツールが導入されるたび、その侵食は加速する。研究全文はMicrosoft Researchで閲覧できる。

証拠は1本の研究にとどまらない。査読付き学術誌Societiesに掲載されたSBS Swiss Business SchoolのMichael Gerlichによる研究は、666人の参加者において、AIツールの頻繁な利用と批判的思考スコアの間に有意な負の相関があることを示した。どの研究も示す方向性は一貫している。AIは認知的努力を減らすが、その代償は「深さ」である。

近道が落とし穴になるとき

多くの経営層の注意をすり抜けている中心的なパラドックスはこうだ。AIが即時の生産性をもたらすのは、判断力、識別力、適応的思考が育つ過程で生じる認知的摩擦を取り除くからにほかならない。上級管理職が、評価フィードバックの下書き、難しい対話への準備、チーム内対立の評価にAIを使えば、時間は取り戻せる。しかし同時に、真の成長の機会も失われる。Gerlichの研究を取り上げたPhys.orgの報道が伝えるように、認知的オフローディング(精神的努力を外部ツールへ移すこと)は、スキル開発を単に一時停止させるのではない。時間の経過とともに、それを逆行させる。休ませている筋肉が強さを保つことはない。萎縮する。

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医療は、この先に何が待つのかを組織に最も明確に予告している。医師の判断と、AI支援による臨床推論を比較した研究は、研究者がアルゴリズムへの服従と呼ぶ現象を特定している。すなわち、臨床医が独自の分析を加えずにAI生成の推奨を受け入れる傾向が強まるというパターンだ。医療における帰結は十分に記録されている。企業の意思決定における帰結は、積み上がりつつあるが、測定されることはほとんどなく、はるかに見えにくい。世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」によれば、分析的思考は雇用主が求める中核スキルの首位であり、10社中7社がそれを不可欠と考えている。組織は同時に、分析的思考が欠かせないと宣言しながら、人々からそれを体系的に奪う訓練をしているのである。

人間の判断は、単に価値があるだけではない。それは新たな雇用保障だ。皮肉なことに、意図的に均衡を取る投資を伴わないAI導入は、労働者と組織を陳腐化から守る能力そのものを侵食している。

測定の蜃気楼

多くの組織の業績管理システムは、AIが容易にするものを測るように作られている。アウトプット量、応答時間、タスク完了率である。一方で、AIが育てにくくするもの──独立した問題解決、文脈に根ざした倫理的推論、健全なリーダーシップを手続き的な順守から分ける適応的判断力──には、ほとんど目が届かない。組織は四半期のダッシュボードで定量化できる効率化の改善に最適化する一方で、数年後にようやく顕在化する能力の損失を吸収している。重大な意思決定で、部屋の誰も維持してこなかった深さが必要になる、その時になって初めて見えるのだ。

先進的な組織はすでに、構造的な対抗策で応え始めている。スピードよりスキル開発を意図的に優先する「守られた場」を指定する。AIの推奨をいつ、なぜ退けたのかを記録する意思決定監査のプロセスを導入し、適切な人間の介入に関する組織的記憶をつくる。さらに、若手社員がワークフローにAIツールを導入する前に、基礎的な分析スキルを身につけることを求める専門性の保全フレームワークを確立し、足場が来る前に土台が存在することを担保する。

本当の介入

解決策はAI導入からの撤退ではない。AIと並行して、人間の成長を補完的に設計することである。競争優位を持続できる組織とは、AIに明確に定義された定型業務を担わせつつ、戦略分析、成長のためのコーチング、重大局面の判断を人間が直接担うハイブリッドなワークフローを構築する組織である。難しい対話に向けた構造化プログラムを設け、機械の効率性でも規程の義務でも代替できない、関係性に依存するやり取りのための時間を守る。

次の10年を規定する企業は、AIを最速で、あるいは最も広範に展開した企業ではない。そうではなく、真の競争の堀が効率では決してなかったことを、早期に、明確に認識した企業である。それは判断力だ。そして健全な判断力は、委任や自動化からは生まれない。反復から、説明責任から、そしてシステムが機能不全に陥り、緊急事態が起こり、決められる機械がどこにもない瞬間に備えて、人間の思考を意図的に統合することから生まれる。

forbes.com 原文

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