経営・戦略

2026.02.22 15:21

IHGの戦略:ロイヤルティの柔軟性とAIで顧客の信頼を勝ち取る

Timon - stock.adobe.com

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競争が極限まで激化した今日の旅行市場において、ホテルのロイヤルティはもはやポイントだけの話ではない。重要なのは「関連性」である。消費者が、従来型のホテルブランドから短期賃貸、体験型旅行プラットフォームまで、これまで以上に多くの選択肢を同時に抱えるなか、グローバルなホテル企業が直面する問いはシンプルでありながら死活的だ。「なぜ、あなたに忠誠を誓うべきなのか?」

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この問いに、IHGホテルズ&リゾーツほど意図的に向き合っている企業は多くない。IHGの最高商務・マーケティング責任者であるヘザー・バルスリーとの最近の対話で明らかになったのは、同社の答えが3つの考え方に根差していることだ。すなわち、ポートフォリオの幅、ロイヤルティの柔軟性、そしてAI主導のパーソナライゼーションを、一貫して大規模に提供することである。

IHGはいま転換点にある。過去10年で同社はブランドポートフォリオを10から20へと倍増させ(さらに21番目も控える)、直近では世界で営業中の客室数が100万室という節目を超えた。この成長は単なる規模拡大ではない。旅行者が「いまいる場所」に、感情面でも経済面でも寄り添うポートフォリオを形づくることにある。

「私は商務・マーケティング組織を率いており、20の、まもなく21になるブランドすべてにわたる顧客体験とブランド戦略を担っている」とバルスリーは説明した。「提携クレジットカード事業を含むロイヤルティプログラム、マーケティング、当社のすべての商業プラットフォーム、データとアナリティクスもだ」

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このエンドツーエンドの責任範囲は重要である。なぜなら旅行においてロイヤルティは、単独で完結するものではないからだ。それはブランドの約束、現場での提供、そして企業がゲストが本当に重視するものをどれだけ理解しているか、その交点に宿る。

規模ではなく戦略としてのポートフォリオ

IHGの差別化は、ブランド設計から始まる。ホリデイ・インやインターコンチネンタルのような象徴的で高いスケールを持つブランドは、世界的な親しみや信頼を提供する。一方で、近年のラグジュアリー/ライフスタイルブランドであるシックスセンシズ、キンプトン、ヴィネット・コレクション、そして最近買収したライフスタイルブランドのルビーは、都市部や参入の難しい市場において、独自性のあるデザイン志向の体験を提供する。

「当社には、象徴的なブランドと……業界をリードするラグジュアリー/ライフスタイルのポートフォリオという、非常にユニークな組み合わせがある」とバルスリーは言う。「その力はまさにポートフォリオ全体に通っている」

これは重要である。なぜなら今日のロイヤルティは、単一ブランドへの忠誠というより、ブランドのエコシステムへと軸足が移っているからだ。出張では見慣れた旗印がもたらす安心を求め、レジャーではより表現力のある、あるいはローカル色の濃いものに心躍らせたい。IHGのポートフォリオ戦略は、現代の旅行者が1つのレーンだけで生きていないことを認めている。

ロイヤルティにまつわる「バニラ」の真実

体験型リワード、オークション、提携について業界が語るのが好きなことは確かだが、ロイヤルティへの加入とエンゲージメントを実際に動かすものについて、バルスリーは驚くほど率直だった。

「顧客がホテルのロイヤルティプログラムに加入する理由の第1位は、無料宿泊のためにポイントを貯めることだ」と彼女は言う。

この洞察は、2021年の「IHG One Rewards」再始動の指針となった。同プログラムは、中核通貨である「無料宿泊」に改めて注力すると同時に、ポイントをいつ、どのように使えるかという柔軟性を積み上げた。

これは、以前関わったコンサルティング案件を思い起こさせる。そこで私は、高級アイスクリームブランドの上位5フレーバーが、すべてバニラのバリエーションだったことを知った。イノベーションは重要だが、人が本質的に求めるものをいじってはいけない。

IHGはその点を見失っていない。プログラム全体での特典交換の大半は、いまも無料宿泊に向けられている。しかし、その「バニラ」の中核の上に重ねられているのが、選択肢だ。妥協のない選択である。

「画一的なアプローチは通用しない」とバルスリーは指摘する。「それがIHG One Rewardsをかなりユニークにしている。私たちはパーソナライゼーションと選択を優先してきた」

マイルストーン・リワードでは、会員がポイント、アップグレード、さらにはアプリを通じて直接提供される飲食クレジットのいずれかを選べる。これは現在、他の主要ホテルのロイヤルティプログラムでは大規模に提供されていない仕組みだ。

希薄化しない柔軟性

IHGの戦略は、柔軟性が希薄化を意味しないことを前提としている。航空会社、OpenTable、日本の楽天、スポーツや文化イベントなどの体験型プラットフォームとの提携はプログラムに厚みを加えるが、中核となる価値提案を犠牲にするものではない。

「通貨としての価値と、ポートフォリオ全体で無料宿泊に使えるという顧客の柔軟性を、損なってはならない」とバルスリーは言う。

このバランスは、グローバル市場全体でとりわけ重要である。中華圏、ドイツ、日本では顧客の動機が大きく異なり、IHGはグローバルな背骨を保ちながら、ローカライズしたアプローチを積極的にテストしている。

ロイヤルティを増幅するAI

対話が特に興味深くなったのはAIの話題だった。多くのブランドがようやく実験を始めた段階にあるのに対し、IHGは何年も前から土台を築いてきた。データ基盤をクラウドへ移行し、収益管理、マーケティング最適化、顧客セグメンテーションに機械学習を組み込んできたのだ。

「データ主導のマーケターにとって、こんなにワクワクする時代はない」とバルスリーは言う。「AIの力によって、これまでにない形で顧客データとインサイトを活用できる」

次の展開はさらに魅力的である。IHGは、新たなロイヤルティおよびCRMプラットフォームと、AI対応のコンテンツ管理システムに投資している。目的は、反応型のパーソナライゼーションを超え、予測にもとづくエンゲージメントへと進むことだ。

狙いは、ゲストが何をしたかを知ることだけではない。なぜ行動が変化したのか、次に何を望むのかを理解することである。

「それが次の地平だ」とバルスリーは説明する。「顧客がいまいる場所に寄り添い、超パーソナライズされた形で関わること」

ホテルを再び「人間的」にする

おそらく今回の対話で最も重要だった洞察は、テクノロジーそのものではなく、人間性に関するものだった。

AIと自動化がより多くの取引的タスクを担うにつれ、ホテルにはサービスの卓越性と感情的なつながりに再び焦点を当てる機会が生まれる。

「テクノロジーは、取引的なやり取りに足を取られることなく、ホテルがサービスの卓越性を提供できるようにする」とバルスリーは言う。

旅行需要が驚くほど強靭であることが証明されてきた時代にあって、その組み合わせ──強いブランド、意味のあるロイヤルティ価値、そして知的なパーソナライゼーション──は、IHGを次の局面に向けて有利に位置づける。

ロイヤルティの未来は小手先の仕掛けではない。信頼を勝ち取ること、価値を提供すること、そしてプログラムされたものではなく個人的に感じられる形で顧客の前に現れることだ。IHGの戦略は、そのことを理解し、それに沿って構築していることを示している。

forbes.com 原文

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