ビジネスモデルは死ぬのではなく変わる
パニックが見落としているもう1つの点がある。ソフトウェア企業はすでに、製品の課金方法を進化させつつあるのだ。旧来のモデルは単純だった。ダッシュボードにログインする従業員1人につき月50ドル(約7750円)を支払う。新たに台頭しているモデルは、価格を成果に結びつける。AIエージェントが保険金請求を処理するたびに10ドル(約1550円)、あるいは一定量の自動化取引に対して定額料金を支払うといった形だ。
ユーザー単位の課金から成果単位の課金へのこの移行により、ソフトウェア企業は自社ツールが生む生産性向上の一部を取り込めるようになる。IT調査会社Gartnerのアナリストは、今回の売り局面に出したノートにおいて、Claude Coworkのようなツールは「日々の知識労働が、いかに手作業のままであるかを露呈させた」のであり、企業向けソフトウェアの終焉を告げるものではないと記した。米証券会社Wedbush Securitiesも同様の趣旨を述べ、企業は現在のソフトウェア基盤に数百億ドル(数兆円)を投じてきており、一夜にしてそれを引き剥がすことはないと指摘した。
今、どこに注目すべきか
ソフトウェアセクターの予想PER(株価収益率)は約20倍まで低下した。2025年末の約35倍から大きく変動し、市場がこの水準に触れるのは2014年以来である。この圧縮は企業を見境なく直撃しており、構造的な優位性を持ち、深いデータ統合と巨大なクラウド基盤を備える企業までもが、実際の業績からかけ離れた評価で取引されていることを意味する。
マイクロソフト株は予想利益の23倍を下回る水準で取引されており、約3年ぶりの低水準だ。四半期単独でクラウド売上高が500億ドル(約7.8兆円)を超え、Azureの伸びが39%で推移する企業にとって、これは大きなディスカウントである。インフラ側の担い手であるエヌビディア、ブロードコム、アリスタ・ネットワークスは、構築の拡大に不可欠な存在であり続ける。だが本当の評価のゆがみは、ソフトウェア層、特にデータが存在する場所を押さえる企業群で広がりつつある。
市場が「SaaSの終焉」と騒ぐ中、決算が示しているのは「進化」
市場は「SaaSの終焉」と騒いでいる。だが決算が示しているのは「進化」だ。その違いを見抜ける投資家こそが、次の勝者になるだろう。


