最先端のAI開発は、もはや純粋な技術競争ではない。巨大なデータセンターや電力網の確保が不可欠となった今、政府のインフラ許認可や国家安全保障政策がビジネスの成否を直接左右する時代に突入した。
かつては政治と距離を置いていたAI企業大手、OpenAIとAnthropic(アンソロピック)は2025年、自社に有利なルール作りを求めて過去最高額のロビー活動費を投じた。具体的には、連邦政府への直接的なロビー活動費は、Anthropicが313万ドル(約4億9000万円。1ドル=155円換算)、OpenAIは299万ドル(約4億6000万円)に達した。両社は、対中競争における「米国の勝利」や「国家安全保障」を大義名分に、データセンター建設の規制緩和をワシントンに強く働きかけている。
AI企業のトップたちは「安全なAI」や「政治と政策の分離」といった理想を口にする。しかし、新政権との緊張をはらみながら数千億円規模の政府契約を狙う彼らが、政治と距離を置くことなど不可能だ。数十兆円から百兆円超の企業価値を持つAI企業が、自らを縛るはずのルールを自分たち自身で作り上げようとする矛盾と、ロビー活動の最前線を解き明かす。
巨大なインフラ投資を通じて、密接に結びつくAI企業と政府の利害関係
先月、AI企業AnthropicのCEOダリオ・アモデイは、AIデータセンターの急増が、大手AIラボの資金面・技術面の利害を政府の政治的利害とますます結び付けていると論じる長文のエッセイを公表した。彼は、テック業界が政府に異議を唱えることに消極的だという姿勢や、政府がAIに関して「極端な反規制政策」を支持していることを嘆いた。そして「政治(politics)より政策(policy)を優先せよ」と訴えた。
だが、数百億円級の政府契約を交渉しながら政治から距離を置けと説くのは難しい。
Anthropicと米国防総省による約310億円規模の契約は、理想と現実の乖離を浮き彫りに
Axiosが最初に報じた、Anthropicと米国防総省の争い──戦闘(warfighting)と業務(enterprise)の双方の用途で国家安全保障向けAIを開発する2億ドル(約310億円)契約をめぐるもの──は、アモデイが主張する分離が、トランプ大統領の「コイン投入式」政権(カネ次第で動く政権)では実現しにくいことを示唆している。AnthropicのCEO自身もそれを理解しているのだろう。だからこそ同社は、競合と同様にロビー活動と政治献金を強化している。



