NASAは同ホワイトペーパーにおいて、ISSの高度を上げて保存する以外にも、ISSを解体して低軌道で再利用するプランや、解体した機体を軌道離脱させるプラン、民間企業への宇宙ステーションの譲渡する案や、2030年以降も運用を継続することなども検証している。しかし、その結果としてNASAは、運用が終了したISSを太平洋に廃棄することが「もっとも安全で唯一実行可能な方法」だと結論づけている。
ロシア区画の分離で実現する?
NASAの検証に基づけば、今回ジョージ・ホワイトサイズ下院議員が提出した「セクション315」によって、ISSの運用方針がすぐさま転換されるとは考えづらい。そもそもISSが廃棄されようとしているのはISSの老朽化が理由だ。5年以上続いたズヴェズダからの空気漏洩は止まったとロスコスモスは説明しているが、この数年間でロシア区間におけるインシデント(事故につながる重大な事案)は多数発生している。
ただし、ISSが2030年以降も運用される可能性は低くない。米国ではISSの後継機として民間企業4社によるステーションが開発または製造されている。それがISSの退役に間に合わなければ、米政府と議会はISSの運用をさらに延長するだろう。これは主に中国ステーション(CSS)だけが軌道上に存在する事態を阻止するための策といえる。実際、今回の法案には、「NASA長官は、1機以上の民間低軌道プラットフォームが利用可能になるまで(中略)、米国による低軌道での継続的なプレゼンス(存在)を確保しなければならない」と記されている。また、民間ステーションへ移行する際の「空白を防ぐ」ために、ISSを維持・保管するという議会の意思も再確認されている。
一方、ロスコスモスは昨年12月、ロシア独自の新型ステーション「ROS」の建設計画を大幅に見直し、ISSのロシア区画をアメリカ区画から分離して、それを継続運用するプランを発表した。ナウカ、プリチャルなど、運用開始から日の浅いモジュールを流用するプランは過去にもあったが、今回のプランでは老朽化したモジュールを含むすべてのロシア区画を流用するという。
満身創痍のロシア区画に対し、アメリカ区画は耐用年数に余裕がある。米国の都合でISSの運用が延長される場合には、おそらく米国人クルーが常駐すると思われるが、2030年にロシア区画が分離されれば、米政府と議会はリスクが軽減された無人のISSを、デブリによる危険度が許容される範囲内で上昇させることも考えられる。


