英国で広がる波紋、米国より大きい理由は
エプスタイン文書は英国政界に激震をもたらしている。トランプ大統領が自身とエプスタインとの深い関係を否定し、ハワード・ラトニック商務長官ら複数の政権関係者の名前が文書に登場しているにもかかわらず政治生命の危機にまでは陥っていない米国とは対照的だ。もっとも、トランプやラトニックをはじめ文書で名指しされている政権関係者は、これまでエプスタインとの関係において何ら不正行為を告発されてはおらず、エプスタインの虐待疑惑についても知らなかったと主張している。
この英米の政界への波紋の広がり方の違いについて専門家は、英国の議会制度など、いくつかの理由を挙げている。英国の議院内閣制においては、議員が首相への信頼を失った場合、内閣不信任案を提出して可決されれば辞職に追い込める。英シンクタンクの政府政策研究所(IfG)でエグゼクティブディレクターを務めるアレックス・トーマスは「議会制民主主義には、説明責任を促す力がある」とAP通信に語った。
英紙フィナンシャル・タイムズのコラムニスト、エドワード・ルースは、トランプとスターマーはエプスタイン事件への対応に関して正反対の動機を持っていると示唆した。スターマーにとっては、事件の調査を推進するほうが自身の「政治的生き残り」を図れるというのだ。マンデルソンの大使任命が疑惑の軽視と受け止められたため、真剣な対応姿勢を示そうと努めている。一方、トランプにとっては、エプスタインとのつながりを深堀りされるのを避けるためには「エプスタイン・スキャンダルを過去のものとして未来を見る」よう人々に促すほうが戦略的に有利だという。
また、英国では「政治的な恥」が米国と比べて重く見られているためだと指摘する専門家もいる。米国ではトランプが数々の物議や刑事告発された経歴を抱えながら2期目の大統領に当選した。マンチェスター大学のロブ・フォード教授(政治学)は「これは、英国のほうが(米国より)機能的に優れたメディアと説明責任の仕組みを有しており、政治にまだ一定の恥の概念が残っていることを示唆していると思われる。つまり、国民が『これは容認できない、これはやってはいけないことだ』と言うのだ」とAP通信に説明した。


