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2026.02.21 00:06

WEF 2026で実証された、エンタープライズAIの本格始動

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スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)への年次訪問も2回目となり、ようやく一息つく時間ができた。そして、ビジネスパートナーであり放送でも共演するダニエル・ニューマンと振り返り動画で話した点に、私は何度も立ち返っている。2025年には、参加者はAIで何が「起こる」か、あるいは何が「起こり得る」かを語っていたが、実際に議論されたアプリケーションは、ほとんどがパイロットプログラムや概念実証(PoC)に限られていた。ところが今年のWEFでは、公式のプレゼンテーションでも小規模な対話でも、議論が実際に成熟したことを強く感じさせる内容だった。これまでに会った中でも最も聡明で実践志向の経営幹部たちが、AIを今この瞬間にどう実装していくかについて、極めて地に足のついた運用アプローチを現在進行形で語っていたのである。

企業、産業、そしてその先におけるAIの実践的活用

HPEのCEOアントニオ・ネリは、以前から私に実際の企業ユースケースについて語ってくれていた。ダボスでは、同社が顧客向けに70件のユースケースを本番環境で展開していると教えてくれた。シスコの社長兼最高製品責任者であるジートゥ・パテルは、メディアや社会全体に蔓延する「誇大な」AIの言説——AIは万能で全員の仕事を奪うか、あるいは何も達成できないほど役立たずかのどちらかでなければならないという論調——を超えて、実際にインパクトを生み出している現実世界の課題に焦点を当てることの重要性を語った。

クアルコムで自動車・産業事業を統括するナクル・ダグルは、産業分野における変化の速さと、エッジでAIを実装する際の固有の課題について語った(今年のWEFではエッジAIについて素晴らしい対話がいくつもあり、ダグルの上司であるクアルコムCEOクリスティアーノ・アモンと、USA Houseのステージで1対1の対談も行った)。また、アブダビのMBZUAI(ムハンマド・ビン・ザイード人工知能大学)の学長でありコンピュータ科学者のエリック・シン博士は、AIによって人々を単調で過酷な作業から解放し、人生の選択肢を広げるべきだという、常識的で人間味のある見方を示した(私はMBZUAIの取り組みについて、推論モデルワールドモデルの文脈で書いてきた)。シン博士は100年前と比較した。当時、米国では人々の90%が農場で働いていたが、現在は3%程度の水準にある。実現可能な代替手段がないまま農場に縛り付けられるほうがよいのか。それとも、農業を選ぶこともできるし、無数の生き方を選べる状態のほうがよいのか。私はシン博士と同様に、AIが私たちの暮らし方に同じくらい深い影響を与える可能性が高いと考えている。

エンタープライズAIの最も実践的な出発点を選ぶ

IBMの最高商務責任者であるロブ・トーマスも、極めて実践的なリーダーの1人である。彼はビジネスを一気に完全変革するようなムーンショット(壮大な目標)にAIを使うことには関心がない。むしろ、この10年の大半——現在の生成AI/エージェント型AIのブームよりはるか以前から——IBMの顧客に対し、現場の退屈で反復的な作業にAIを使うよう助言してきた。コントロールできることをコントロールし、パイロットから本番環境へと迅速に移行し、その恩恵を享受するのだ。

トーマスが、インフォシスでコミュニケーション、メディア&テクノロジー事業のグローバルリーダーを務めるアナンド・スワミナサンとどれほど話したことがあるのかは分からないが、両者には一致点が多いはずだ。スワミナサンの見立ても同様に、現場のビジネス現実に結び付いている——インフォシスが実装ビジネスに深く関わっていることを考えれば当然である。彼は企業に対し、顧客獲得やサービス拡充などで新規投資が効果を発揮し得る領域と並行して、AIによって支出を減らせる領域にも目を向けることを求めている。思弁的な「もしも」の空想ではなく、基本的なビジネスの問いに立ち返るということだ。

以上は、ダボスで交わした対話のほんの一部にすぎない。言及した各幹部の発言をより詳しく知り、さらにスノーフレイク、チェック・ポイント、セロニスなど、AI実装に積極的に取り組む他のリーダーへのインタビューも見るには、「The View from Davos」動画ライブラリーを参照してほしい。

WEF 2026はAIをめぐる、より成熟した見方を示した

今年のWEFで記憶に残ることは他にもある。トランプ大統領の演説を前に、町全体で敷かれた隙のない警備体制——重武装の警備部隊や屋上の狙撃手まで含む——がその一つだ。そして、デジタル主権からエージェント型AIを支えるデータ構造まで、消化すべきビジネスと技術の細部は膨大にあった。

しかし何より、私はこれを「エンタープライズAIが大人になった年」として記憶することになるだろう。

forbes.com 原文

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