AIと地政学の交差点で再び高まる、シリコンバレーと日本の「対話」の価値
2025年9月中旬、スタンフォード大学の敷地内に併設された美術館「カンター・アートセンター」に日米から産官学民のリーダーたちが集まった。NPOシリコンバレー・ジャパン・プラットフォーム(SVJP)の創設10周年と「SVJP イノベーター・アワード 2025-Forbes JAPAN協賛-」の受賞者を祝うガラ・パーティーのためだ。
アンソロピック共同創業者兼社長のダニエラ・アモデイがイノベーター・アワードを、NBAロサンゼルス・レイカーズに所属する八村 塁選手がヤング・プロフェッショナル・アチーブメント・アワードを受賞する模様を、日米を代表する大企業やスタートアップの経営者が見守った。
SVJPは公益財団法人「国際文化会館」と「米日カウンシル(米国:NPO法人、日本:公益財団法人)」のもとで運営されており、日本と米西海岸にあるシリコンバレーの両地域のリーダーが交流するためのプラットフォームを提供している。いわば“日米の産官学のリーダーたちのためのコミュニティ”である。創設理由は、日本の経営者と、世界経済をけん引する影響力をもつまでになったシリコンバレーとの結びつきの弱さを危惧していたからである。
そして今、シリコンバレーの重要性がいっそう高まっている──。「AI(人工知能)」だ。OpenAIやアンソロピックといったAIスタートアップ、グーグルなどのビッグテックが毎週のように、新製品のローンチや大型の製品アップデートを繰り返している。そのあまりのスピードゆえ、迅速な経営判断を求められるテック企業経営者たちがベイエリアを離れられないという。実際、頻繁に来日する米テック系CEOにも滞在期間の短縮を余儀なくされた人は少なくない。
ベンチャー投資家(VC)たちも同様の危機感を抱いている。コロナ禍では、マイアミやオースティンなど、米国の他の都市へ移ったりする起業家もいたが、VCの多くがベイエリアへの回帰を起業家たちに促している。この回帰現象を象徴するのが、サンフランシスコのヘイズ・バレー(Hayes Valley)地区だ。AIエンジニアやハッカーハウス(共同生活兼作業場)が密集していることから、シリコンバレーをもじって「セレブラルバレー(脳の谷)」と呼ばれている。
だが、日米の交流の重要性は単にAIにとどまらない。現在の地政学・地経学的な難局だからこそ、民主主義という価値観を共有する日米の交流が不可欠なのだ。SVJPの顧問を務める、元NBAチャンピオンで米大統領候補として出馬した経験をもつビル・ブラッドリー元上院議員はこう語る。
「日米関係の重要性はかつてないほど高まっており、今後、それはさらに増していくことでしょう。そして日米はともに発展し、深い意味でその一翼を担っていかなければなりません。SVJPを通じて人々が集い、協力し合うことを私は願っています」


