個人向け金融サービス企業が8社を占め、家計管理アプリも利用を広げる
個人向け金融サービス企業は、「Fintech 50」2026年版で8社を占めた。そのうち新顔の1社が家計管理アプリのMonarch(モナーク)だ。この分野ではIntuit(インテュイット)が2024年にMint(ミント)を終了した後、目標設定やカテゴリー別予算管理、AIアシスタントなどの機能を強みとするモナークが、有力な代替サービスとして利用者を広げた。有料会員数が50万人を超える同社は2025年、評価額8億5000万ドル(約1309億円)で資金調達を実施した。
もう1社の選出企業Possible Finance(ポッシブル・ファイナンス)は、33州で主に低所得層の消費者を対象に50〜500ドル(約7700円~約8万円)の小口融資を提供している。同社は、支払いを複数回に分割できることに加え、当初の返済期限から最大29日間の延長を可能にすることで、ペイデイローン(次回の給料日を返済期限とする無担保ローン)より柔軟な選択肢を打ち出している。2017年の創業以来、同社は150万人に対し累計17億5000万ドル(約2695億円) 超を貸し付けている。
上場済みの決済企業には厳しい1年、未上場の決済スタートアップも減速の兆し
上場済みの決済企業にとって、2025年は厳しい1年となり、ペイパルをはじめとする多くの企業の株価は、2桁台の下落に見舞われた。未上場の決済スタートアップにも減速の兆しが見られ、「Fintech 50」2026年版入りは7社にとどまり、前年の11社から減少した。ただし、逆風の中で初選出を果たした企業もある。
暗号資産型ステーブルコインの移動・保管・活用を企業向けに支援するRain(レイン)はその1例だ。同社の評価額は直近5カ月で3倍に拡大し、2026年1月には19億5000万ドル(約3003億円)に達した。決済大手ストライプは2025年、評価額が過去最高の1070億ドル(約16.5兆円)に到達し、「Fintech 50」2026年版で11年連続となった。
暗号資産関連と保険テックの分野は、計10社のうち7社が初選出と存在感を高める
暗号資産関連と保険テックの両分野は、2025年に前年よりも存在感を高めた。両分野はそれぞれ、「Fintech 50」2026年版で5社ずつを占め、計10社のうち7社が初選出となった。その代表例の1つが分散型取引所Hyperliquid(ハイパーリキッド)で、同社は高いレバレッジをかけた暗号資産の投機に用いられるパーペチュアル先物市場で約80%のシェアを獲得した。サービス開始から2年足らずで、同社の取引高は2兆9500億ドル(約454.3兆円) に達し、売上高は8億4400万ドル(約1300億円)を記録した。
もう1つの選出企業は、創業6年目の保険テック企業Nayya(ナイヤ)だ。同社は従業員の健康情報や財務データをAI搭載ソフトウエアに取り込み、最も費用対効果の高い医療保険や補足保険の選択、保険金請求の手続き、401(k)や個人資産の管理まで支援している。
不動産分野は今回も最小カテゴリーに──商業用不動産市場の低迷などの課題を反映
不動産分野は今回も最小カテゴリーとなり、わずか2社が選出された。この低水準は、オフィスを中心とする商業用不動産市場の低迷や、住宅市場で続く在庫不足など、業界全体が抱える構造的な課題を反映している。
AI導入で遅れをとる中、中核に据えたフィンテック企業3社が初選出
テック業界のあらゆる領域にAIの利用が広がる中、フィンテック企業は他のテック系スタートアップに比べ、遅れをとってきた。金融取引は1度の誤りが大きな損失につながりかねず、規制も厳しいことが背景にある。しかし、いち早く取り入れた企業は成果を上げており、「Fintech 50」2026年版にはAIを中核に据えたフィンテック企業3社が初登場した。
その1社が、オラクルのNetSuiteのような既存会計ソフトへの対抗を狙う、AIベースのエンタープライズ向け会計・財務システムの構築を急ぐRillet(リレット)だ。もう1社のReserv(リザーブ)は、保険会社の保険金請求処理を迅速化するためにAIを活用し、企業の請求関連データを一元化することで、査定担当者が容易に検索・確認できるようにしている。3社目のRogo(ロゴ)は、投資銀行業務の煩雑な下準備作業をAIで効率化している。
予測市場の有力企業であるPolymarket(ポリマーケット)とKalshi(カルシ)も、2026年版で「Fintech 50」入りを果たした。
かつてリストから外れた企業2社が復活を果たす
「Fintech 50」2026年版には、かつてリストから外れた後に復活した企業が2社含まれている。その1社が不正防止と本人確認を手がけるSocure(ソキュア)で、前回の選出は2021年だった。キャピタル・ワンやシティ、ウーバーなどを含む3000社超を顧客に抱えるソキュアの2025年の売上高は前年比43%増の2億ドル(約308億円)、純利益は1850万ドル(約28億円) となった。中小企業向け融資を行うFundbox(ファンドボックス)は、前回の選出が2016年だった。それから9年後の現在、同社は15万社の中小企業にサービスを提供し、創業以来の融資総額は60億ドル(約9240億円)に達している。2025年の売上高は1億1000万ドル(約169億円)と、2024年の7800万ドル(約120億円)から増加した。
フォーブスは、「Fintech 50」2026年版の選定にあたり、記者と編集者8人からなるチームで数百社を分析し、事業の成長性や製品の革新性、経営陣の多様性などを評価した。あわせてCEOや業界関係者への取材も実施した。「Fintech 50」は、本社または主要な事業拠点が米国にあり、上場企業の一部ではない企業を選考対象としている。


