直接の引き金は何だったのか。多くの人は、ドナルド・トランプ米大統領が中国からの輸入品に対して、すでに適用している30%の関税に加え、さらに100%の関税を課すと表明したことだったと考えている。
この地政学的ショックは市場を広く動揺させたが、暗号資産市場はレバレッジが高く効いた構造をしているため、本来ならたんなる調整で済んでいたはずの動きが暴落になってしまった。
10/10クラッシュは、取引所のリスク管理に潜む根本的な構造的弱点を露呈させた。とりわけ、あるひとつのプラットフォームが大きな責任を負っている可能性がある。
「バイナンス」という要因
暗号資産取引所大手OKXの創業者であるスター・シュー最高経営責任者(CEO)は最近、X(旧ツイッター)への投稿で、10/10はどのようにして起こったのかについて自身の見解を詳しく記している。
シューによると、当時バイナンスが、仮想通貨イーサリアムのネットワーク上にある合成ドル「USDe」に12%の年間利回り(APY)を提供するという、積極的なユーザー獲得キャンペーンを始めていた。同時に、バイナンスはUSDeを「USDT」や「USDC」といった定評あるステーブルコインと同等に扱い、担保として利用できるようにしていた。
シューの見るところ、バイナンスがつくり出したのは危険なインセンティブ構造だった。ユーザーは魅力的な利回りを得るためUSDTやUSDCをUSDeに交換するよう促されたが、それがはるかにリスクの高い資産であることに無自覚だった。
そうしてレバレッジのループが始まった。抜け目のないユーザーたちは、USDTをUSDeに交換し、そのUSDeを担保にしてさらにUSDTを借り入れ、その借りたUSDTを再びUSDeに交換できることに気づいた。シューによれば、この作業を繰り返すことで、APYは人為的に24%、36%、さらには70%超にまで押し上げられていった。
ボラティリティー(変動性)が高まると、USDeは急速に米ドルとのペッグ(連動)を失っていき、その後、連鎖的な清算が発生した。売りが売りを呼ぶ典型的な「ドゥームループ(悪循環)」が生じ、強制売却がさらなるマージンコール(追い証)を招き、それがまた強制売却につながるという事態に陥った。


