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2026.02.26 10:15

トヨタ脱炭素の最前線──材料技術のキーマンが明かすライフサイクル全体での挑戦と課題

左から慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の蟹江憲史氏、トヨタ自動車先進技術開発カンパニー Executive Vice Presidentの加古 慈氏

左から慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の蟹江憲史氏、トヨタ自動車先進技術開発カンパニー Executive Vice Presidentの加古 慈氏

2026年1月27日〜29日、愛知県名古屋市で「テクノロジーで地球の未来を拓く場」をコンセプトにグローバル・イノベーションフェスティバル「TechGALA Japan」が開催された(主催:Central Japan Startup Ecosystem Consortium)。第2回目の今回も、スタートアップに大手企業、ベンチャーキャピタル、研究機関など、世界中からイノベーションプレイヤーが集結。5500人超が来場し、会場は熱気に包まれた。 

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イベントでは140以上のセッションが開催されたが、その中から今回は、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の蟹江憲史(かにえ・のりちか)氏と、トヨタ自動車先進技術開発カンパニー EVP(Executive Vice President)の加古 慈(かこ・ちか)氏が脱炭素社会の実現に向けた技術開発とその挑戦、課題について語り合ったセッションをレポートする。トーク内では、ネットゼロへの障害となっている技術について、加古氏がスタートアップに提供を求める場面も見られた。

脱炭素は「遠い目標」ではない

冒頭、蟹江氏は気候変動対策の緊急性について言及。

「(日本は)20年くらい前まではCO2を2050年までに60〜80%削減することが目標でしたが、今や100%。つまり実質ゼロが求められています。2024年単年の世界平均気温は、産業革命前と比べて1.55度上昇。今後もさらに温暖化は進み、厳しい温暖化対策をとらなかった場合、21世紀末には世界の平均気温が4度前後上昇すると言われています。長期的な課題と思われてきた脱炭素ですが、今や非常に喫緊の課題なのです」

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気候変動対策には、エネルギー消費の削減がもっとも有効であることは既知の事実だが、それでは貧困層などにエネルギーが行き渡らなくなる可能性がある。蟹江はトレードオフに陥っている現状を挙げ、知恵を凝らした配分と再生可能エネルギーの普及、さらには経済の仕組みの変革が不可欠だと訴えた。

それに対し、トヨタ自動車で材料技術領域を統括する加古氏は、同社の脱炭素対策について、2015年に環境目標の『環境チャレンジ2050』を掲げ、取り組んできたことを紹介した。 

走行時のCO2排出削減に向けては、2023年から「マルチパスウェイ戦略」を実施し、ハイブリッド車や電気自動車など、複数のパワートレーン(駆動方式)を展開することで、各国のエネルギー事情やインフラ整備状況に合わせて、ユーザーが選択肢をもてるようにしてきたこと。さらには走行時だけでなく、車のライフサイクル全体でCO2排出量をゼロにすることを重視してきたことを強調。

その理由について加古氏は、「走行時のCO2排出量を例えゼロにできたとしても、地域のエネルギー事情によって燃料としての電気や水素の製造、あるいはバッテリーなどの製造過程でCO2を多く発生させるケースがあります」と語った。

すると、自身もハイブリッド車を保有しているという蟹江氏は、「我々ユーザーは、自分が見えるところの排出量に目が行きがち。ユーザーがライフサイクル全体の排出量を把握できるような技術や仕組みが整ってくるといいですね」と期待を述べた。

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文=真下智子 編集=大柏真佑実

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