出力6倍、レアアース使用量97%減の衝撃
続けて加古氏は、トヨタ自動車のグローバル販売台数における電動車比率が、2016年からの10年間で約3倍になっている事実に触れた。そして、電動車に共通するコア技術3つ(モーター、バッテリー、パワーコントロールユニット)と、それらにエンジンや充電器などのユニットを組み合わせることによって、複数のパワートレーンの電動車が作られていることを説明。
さらなる電動車普及のためには、「まずお客様が購入しやすい価格にすることが重要で、そのためには、電動車に使われる材料の低コスト化や生産性向上、性能向上が必須です」と言い、材料技術のイノベーションこそがCO2排出量削減の核になるとした。

その代表例として加古氏は、初代プリウスから現行の5代目モデルまでのモーターの進化を紹介。通常、車のモーターには、発進時などにトルク(エンジンまたはモーターが生むタイヤを回転させる力や車を前に押し出す力)を効率よく発生させるために、強力な磁石を用いる。そして、走行時などにモーターの内部が高熱になっても磁力を維持するために、耐熱性のある希土類元素(レアアース)を添加する必要がある。しかし近年、レアアースについては環境負荷や地政学的リスクなどを理由に、使用の制限が進められている。
そうしたなかトヨタ自動車では、レアアースが必要なモーターに使われる磁石の部位を特定し、そこに集中してレアアースを添加する技術を採用。加古氏は同社がプリウスのモーターの出力密度を、初代から現行まで6倍以上に向上させる一方で、磁石の使用量削減に加え、レアアースの使用量も97%減らすことに成功したと伝えた。
「シュレッダーダスト選別」という難題
さらに加古氏は廃車時の資源循環について、特に欧州のELV規則案(End-of-Life Vehicles:廃自動車規則)の厳しさについて語った。
「製造時に使用する樹脂の25%はリサイクル材を使用することや、さらにその20%以上に廃車由来のリサイクル材を使うこと、さらに設計面に関しても、容易に分解できる設計が義務化され、19品目の部品の取り外し、リサイクル情報の開示などさまざまな工程で規制されます。そこでトヨタ自動車は『回収の工夫』『シュレッダーダストの最小化』『素材の再利用』の3つに重点的に取り組んでいます」(加古)

加古氏は、中でも使用済みの自動車を粉砕した後に残る廃棄物、シュレッダーダストの最小化に関するスタートアップからの技術提供を呼びかけた。「鉄や非鉄金属などを分別した残りは、シュレッダーで粉砕されます。その中に含まれる樹脂などは分別しにくく、多くはサーマルリサイクル(熱回収)されてしまう。
風力や食塩水を作って比重選別(物質の重さの違いにより資源を効率的に分離する方法)も行っていますが、添加されているものによっては異なる物質の比重が近しくなることもあり、困難を極めています。安価に分けられるということが大事になるのですが、スタートアップの皆さんに選別技術をぜひご提案いただきたい。それによって、より高品位なリサイクル材を確保できるようになってくると思います」(加古)



