こうしたソーシャルメディアの利用傾向は、無限スクロールやプッシュ通知などの機能がプラットフォームに備わっていると促進される。アルゴリズム設計も、睡眠不足や運動不足といった悪影響につながりかねない問題のある使用方法ですら、報酬として認識する仕組みとなっている。中国・上海に暮らす退職者1万5000人余を対象とした2025年の研究結果によれば、1日6時間以上のソーシャルメディア利用は高齢者の抑うつや不安の増加と関連していた。
プラットフォームが使い過ぎを誘発する設計になっていると、高齢者にとってはより深刻な問題が起こり得る。思考や記憶を担う脳の司令塔である前頭前野が自然に変質し、強迫的な確認行動に抗うことが困難になるからだ。孫とつながるための行為だったはずが、気づけばYouTubeのおすすめ動画を延々と見続けてしまう「ウサギの穴」現象にはまり、30分置きにFacebookのページを更新せずにはいられない、といったことが生じるのである。
さらに、高齢者がアルゴリズムによる説得・勧誘に遭遇しやすいライフステージは、人生のうちでも脆弱な時期にあたり、退職後のアイデンティティー喪失や親しい人との死別、身体機能の低下をはじめとする健康問題など、重大な出来事が重なりがちだ。そうした状況下では、常につながっている状態が約束されていることはプラットフォームの売り込みではなく、救済のように感じられる。
ソーシャルメディア利用時にプラットフォーム上でタスクの切り替えをしょっちゅう求められるために生じる注意力の断片化も、問題の原因となり得る。ゲーム、メッセージ、動画、ニュース、通知などへと注意力が分散され、無限スクロールと相俟って認知機能への負荷が増大すると、認知機能低下を防ぐ熟読などの習慣が損なわれる恐れがある。
オンライン犯罪に対する脆弱性も、高齢者のソーシャルメディア利用について回る重大な問題だ。懸賞金詐欺、高額当選詐欺、投資詐欺、オレオレ詐欺など、高齢者を標的とした犯罪にさらされるリスクが高いからだ。
高齢者を狙った金融詐欺の被害規模は、問題の深刻さを如実に物語っている。米連邦取引委員会(FTC)の推計によれば、米国における高齢者の被害総額は、潜在的な被害を含めると2024年だけで815億ドル(約12兆5000億円)にも上る。その大半が、ソーシャルメディアで宣伝される投資詐欺によるものだ。


