ロシア側はスターリンクの代替手段としてさまざまな選択肢を検討し始めている。理論上、スターリンクの代わりになり得る商用衛星サービスは供給が限られており、価格つり上げの対象にもなっているため、それを急いで大規模に調達しようとすればコストが法外に高くなる。
ドローン(無人機)を用いて光ファイバーケーブルを敷設するといった即席の解決策も考えられるが、これは膨大なリソース必要とし、時間もかかる。兵站面で相当な労力を必要とするうえ、人員や装備を戦場の危険にさらすことにもなる。また、有線ケーブルは位置がほぼ固定され、刻々と変化する前線に柔軟に対応できないため、部隊が前進または後退する際に脆弱になる。つまり、こうした弥縫策では、スターリンクが提供していたような広範で強靭な接続性を再現できない。
バラージュ-1は即時の解決策にはならないものの、スターリンクへのアクセス喪失によって生じた空白を埋める中期的な選択肢としては魅力的だろう。この戦争を通じて、ロシアの防衛産業基盤は有望な技術を急速に成熟させ、供給する能力を持つことを示してきた。このシステムは主に国産部品を採用しているとされるので、外国のサプライヤーにあまり依存せず、試験が成功し次第、迅速に量産体制に入れると見込まれる。
バラージュ-1の正確な配備時期は現時点で不明だが、配備は段階的に進められる公算が大きい。まず、ウクライナ軍の攻撃を最も受けやすい方面を対象に運用し、その後より広範な戦線をカバーできるように拡張されていくと考えられる。こうしたアプローチには時間がかかるものの、現行の代替手段よりは広範なカバーを提供できるようになる可能性がある。
バラージュ-1は戦場にどのような影響を及ぼすか
バラージュ-1は通信接続の回復手段になり得るものの、結局は一時的な解決策にとどまるだろう。開発・配備に成功したとしても、このシステムの滞空期間はせいぜい数週間に限られるため、通信の空白が再発しないようプラットフォームを継続的に入れ替える必要がある。また、各バラージュ-1のカバー範囲は衛星通信よりも狭く、兵站や維持管理面の負担が重くなる。さらに、気象の変動や、成層圏の過酷な環境下での素材劣化も、長期的な運用持続をいっそう難しくする。応急策としては役に立っても、本物の衛星コンステレーションが備える冗長性(障害耐性を高めるために持たせる「余裕」)や規模、強靭性には欠ける。


