5G対応のNTN機器を搭載したバラージュ-1が運用されるようになれば、ロシア軍の前線部隊はそれを利用して後方部隊と通信できるようになり、後者からデータがさらに地上ネットワークを通じて上層部に伝達されることになるだろう。高高度の空中プラットフォームが本質的に持つ見通し線(LOS)面での大きな優位性も考え合わせれば、ロシア軍部隊は実質的にスターリンクのように機能するシステムを得られるとみられる。
バラージュ-1は、ロシア北西部ノブゴロド市に本社を置くアエロドロームマシュ社がバウマン記念モスクワ国立工科大学と協力して開発している。このプロジェクトは、リスクの高い先端的な防衛技術の振興を目的とするロシア高等研究財団の資金支援を受けている。
ロシア軍がスターリンクへのアクセスを失ってから1週間ほどたった13日ごろ、バラージュ-1の最初の試験打ち上げの様子とされる動画がソーシャルメディアで共有された。ロシア側の報道では、このプラットフォームはほぼすべて国産部品で構成されていると強調されており、制裁や禁輸措置に伴うサプライチェーン(供給網)制約を回避し、迅速に生産を拡大できることが示唆されている。今回試験された初期型は数日間の滞空が見込まれており、今後改良が進めば数週間の滞空能力を持つ可能性もある。
ロシアがスターリンク喪失への対応を急ぐ理由
通信接続の喪失はロシア軍にとって深刻な打撃となっている。ロシア軍はトップダウン型の指揮系統に依存しているためである。意思決定の権限は上位の本部・司令部に集中しており、命令は上から下へと流れ、下位部隊の裁量は限られる。戦術部隊は機動、火力運用、兵站の各面で上級指揮官による適時の指示・調整に依存している。通信が妨害されると、意思決定のサイクルは遅延し、部隊間の連携は低下し、戦闘力を迅速に集中させる能力も弱体化する。
ウクライナ軍はこの混乱に乗じ、ロシア軍に対して一連の攻撃に乗り出している。ウクライナ軍部隊は東部ハルキウ州クプヤンシク近郊のオスキル川西岸で前進し、同市西側の接近路の一部を奪還したと報じられている。また、南部ザポリージャ州でもロシア軍と交戦し、局所的にロシア軍の陣地線を押し戻している。現時点ではこれらの攻撃は、防御陣地の構築に必要な重要地形の確保を主目的とした限定的なものに見える。とはいえ時間がたつにつれて、ウクライナ軍はロシア側に対してより広範な反撃に出る可能性も十分ある。


