北米

2026.02.19 11:30

エプスタイン醜聞で米タレント事務所が崩壊の危機、創業者兼CEOの追放劇と3000億円売却の行方

ケイシー・ワッサーマン(Photo by Andreas Rentz/Getty Images)

ケイシー・ワッサーマン(Photo by Andreas Rentz/Getty Images)

ハリウッドと米スポーツ界において影響力を持つ大手タレント事務所「ワッサーマン」の創業者、ケイシー・ワッサーマン(51)がCEO辞任と事業売却を表明した。発端は、米政財界を揺るがす性犯罪者ジェフリー・エプスタインの共犯者、ギレーヌ・マクスウェルとの過去の親密なメールが発覚したことにある。マクスウェルは、エプスタインによる性的搾取の“右腕”として複数の少女・成人女性を勧誘し、エプスタインに引き合わせていたことが裁判で明らかになっている。2022年6月マクスウェルは、未成年女性への性的虐待罪などで禁錮20年の実刑判決を言い渡され、現在は服役中だ。

米国社会を問わず、未成年者の性的搾取に関わる人物との交流は、法的な成否を問わず致命的な「道徳的リスク」とみなされる。特に「ワッサーマン」は、2025年のグラミー賞で最優秀新人賞を受賞し、Z世代の新たなカリスマとされるチャペル・ローンをはじめ、倫理観を重視する若手アーティストを多く抱えていた。ローンなどによる事務所離脱の表明を引き金に、所属スターの契約解除が相次ぎ、経営トップの維持は不可能となった。またワッサーマンは、2028年ロサンゼルス五輪の組織委員会会長も務めており、全米に衝撃を与えている。

未成年者の性的搾取に由来する不名誉な追放劇でありながら、事業売却によってワッサーマン本人が手にする利益は数億ドル(数百億円)超にも上る見通しだ。この巨額の売却益を巡り、さらなる議論を呼ぶのは必至といえる。

所属アーティスト24人による抗議と契約解除を受け、タレント事務所の創業者兼CEOが辞任と事業売却を表明

ケイシー・ワッサーマンが率いるタレント事務所「ワッサーマン」では、所属アーティストの大規模な反発・抗議が発生し、チャペル・ローンを含む24人が契約を解除し離脱した。これを受けワッサーマンは2月13日夜、4000人を超える従業員に宛てた社内メモで、CEOを辞任し事業から完全に身を引くと発表した。「私は、自身が組織の妨げになっていると感じている。だからこそ、すでに進行中の会社の売却プロセスを開始した」と彼は記していた。

新たに公開されたエプスタイン関連文書で、2003年当時にギレーヌ・マクスウェルと交わした親密なメールのやり取りが明らかになったことで、ワッサーマンは高まるプレッシャーに直面していた。

企業価値の推計と、ワッサーマンが保有する株式の行方

ワッサーマンは、2002年に同社を創業して以来、俳優やミュージシャン、スポーツ選手、クリエイターを擁するエージェンシーの業務運営と取締役会での議決権を支配してきた。フォーブスは、彼が現在も推定約40%の株式を保有しており、残りはロードアイランド州に拠点を置くプライベートエクイティのプロビデンス・エクイティ・パートナーズが保有していると見ている。今後はワッサーマンの持ち分が市場で売却されるか、より可能性が高いのは、プロビデンスが買い取ったうえで会社全体または一部を再売却するケースだ。

企業全体の評価額は約3080億円を超える可能性

同社の評価額は確定していない。資産の状況やタレント代理業という事業の変動の大きさを踏まえると算定は容易ではないが、売上高や収益性、収益源の多様性を考慮すれば20億ドル(約3080億円。1ドル=154円換算)を超える可能性がある。S&Pの最近の信用報告書によれば、同社は2024年に約9億ドル(約1386億円)超の売上高を計上し、EBITDAマージンは16〜18%だった。フォーブスは、これらを基に企業全体の価値を20億ドル(約3080億円)超と推計している。仮にその水準で評価されれば、ワッサーマンの持ち分は少なくとも8億ドル(約1232億円)に相当する。

実際に売却が成立した場合、負債や税金が差し引かれるため、最終的な手取り額は9桁ドル台半ばに落ち着く見通しだ。それでも、フォーブスは、ワッサーマンの個人資産が現金や個人所有の不動産を含め少なくとも7億5000万ドル(約1155億円)に達すると試算している。

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翻訳=上田裕資

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