北米

2026.02.19 11:30

エプスタイン醜聞で米タレント事務所が崩壊の危機、創業者兼CEOの追放劇と3000億円売却の行方

ケイシー・ワッサーマン(Photo by Andreas Rentz/Getty Images)

祖父の遺産を元手にした創業と、積極的な買収による事業拡大

タレントエージェンシー業界でこれほどの資産を築いた人物はほとんどいない。デヴィッド・ゲフィンやジェイ・Zはビリオネアになったが、巨額の富は別の分野で築いたものだ。とはいえ、ワッサーマンはもともと上流社会と無縁の人物ではない。彼の祖父は、伝説的なハリウッドのスーパーエージェントからスタジオ幹部に転じた人物として知られるルー・ワッサーマンで、フォーブスはその資産を1998年時点で5億ドル(約770億円)と見積もっていた。祖父が2002年に亡くなった際、若きワッサーマンは数百万ドル(数億円)規模の遺産を受け取り、その資金を元手にワッサーマン・メディア・グループ(当時の社名)を設立した。彼は創業から最初の10年間で少なくとも10件の重要な買収を進め、事業を急拡大させた。

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ワッサーマンは当初、祖父とは異なる独自のレガシーを築こうと考え、事業の軸をスポーツ分野に絞り、外部資本を取り入れながら事業拡大を続けた。2012年にはハイブリッジ・キャピタル・パートナーズから2500万ドル(約39億円)の出資を受け、その際の企業価値は約2億5000万ドル(約385億円)と評価された。だがワッサーマンは2013年、その持ち分を買い戻した。2014年には、ウォルマート創業家のロブ・ウォルトンに関連するファミリーオフィス、マドローン・キャピタルから1億ドル(約154億円)の出資を受けた。

2020年には、ニューヨークを拠点とするジェリー・カルディナーレのプライベートエクイティ会社レッドバード・キャピタルが、より大きな持ち分を取得し、ロサンゼルスのエージェンシー「パラダイム」の音楽部門を推定2億5000万ドル(約385億円)で買収する資金を提供した。これにより、「ワッサーマン」は音楽ツアー事業へと進出した。

2022年、「ワッサーマン」の主要株主プロビデンス・エクイティ・パートナーズが、レッドバードとマドローンの持ち分を買い取り、両社は投資を回収した。これを受け、同社は放送分野のモンタグ・グループ、国際サッカー分野のCSM、ハリウッドのブリルスタインなどの十数社を買収した。

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スポーツから音楽分野まで、4000人を超えるアーティストやスポーツ選手をクライアントとして抱える

こうして拡大した企業群は「チーム・ワス」と呼ばれ、合計で4000人を超えるクライアント(編注:本稿でのクライアントとは、アーティスト、スポーツ選手を指す)を抱える規模に達した。2025年、フォーブスは、「ワッサーマン」を北米で2番目に価値の高いスポーツエージェンシーに位置付けた。同社が管理する契約総額は95億ドル(約1.5兆円)超に上る。その中には、MLBの山本由伸やジャンカルロ・スタントン、NBAのクレイ・トンプソン、WNBAのブリアナ・スチュワートとペイジ・ビューカーズ、NHLのコナー・マクデビッド、オーストン・マシューズなどの大型契約が含まれる。これら契約から得られる手数料は、契約期間全体で10億ドル(約1540億円)近くに達する可能性がある。

ブランドとのマーケティング契約がもたらす高い収益性

また昨今、同社は競合のCAAやWMEと同様に、タレントの代理業務そのものよりも、ブランドとのマーケティング契約や自社が扱う商業権ビジネスへの依存度を高めてきた。グッチ、クリスチャン・ルブタン、ニューバランスといったブランドとのパートナー契約がその一例だ。

フォーブスは、同社のこうした分野が2024年の売上高の45%、利益の過半を占めたと推定している(比較として、エンデバーの場合、傘下のWMEとIMGが手がける代理業部門の売上は、全体の約4分の1にとどまり、残りの75%はスポーツ資産、コンテンツ、イベントなどの自社保有事業が占めている)。ブランドや商業権ビジネスは収益の柱であるだけでなく、企業価値の算定においてより高い評価倍率をもたらす効果もある。

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翻訳=上田裕資

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