インターネットを通じて膨大なコンテンツへのアクセスが可能となった現在、ビジネスの視点からもコンテンツとユーザーの最適な関係性をどう定義すべきかが改めて問われている。テクノロジーとコンテンツが高度に融合する現在のビジネス環境において、アップルはどのような戦略を描いているのだろうか。
米アップルのオリバー・シュッサー氏が来日した。シュッサー氏は、音楽配信の「Apple Music」や動画配信の「Apple TV」をはじめとするアップルの主要なエンターテインメント部門と、Beatsのブランドを統括するバイスプレジデントだ。
本年6月にサービス開始から11周年の節目を迎えるApple Musicの歩みを軸に、責任者であるシュッサー氏の展望から、アップルが示す次世代のコンテンツビジネスの方向性を読み解く。
音楽ファンによる、音楽ファンのためのApple Music
Apple Musicは2026年6月にローンチから11周年を迎える。今日のように音楽配信サービスが普及する前の音楽体験は、iTunes以前のCDやレコードといった物理メディアによるリスニングスタイルが一般的だった。アップルはiTunesを通じてデジタル配信の選択肢を広げ、2015年6月にApple Musicを立ち上げることで、音楽体験の中心をストリーミングにシフトさせてきた。
現在、Apple Musicでは1億以上の楽曲を、個人プランの場合は月定額1080円(税込)で“聴き放題”で楽しめる。シュッサー氏は、このサービスがもたらした変化を次のように述べている。
「音楽ストリーミングの登場により、世界中のどこにいても簡単に音楽コンテンツにアクセスできるようになりました。Apple MusicはiPhone、iPad、Apple Watch、Apple TV、さらにはサードパーティのデバイスや車中でも、あらゆる楽曲をいつでも聴くことができる音楽サービスです」
シュッサー氏が率いる、アップルのエンターテインメントビジネスの根底にあるのものは徹底した「高品質であること」へのこだわりだ。Apple Music、Apple TV、ポッドキャストなど、提供されるすべてのサービスにおいてベストクオリティのコンテンツをつくり、さまざまなデバイスなどを通じて極上のユーザー体験を届けることを共通の使命としている。
シュッサー氏はApple Musicの「強み」でもある特徴として、空間オーディオ(Spatial Audio)によるリスニング体験の革新と、専任エキスパートが担うヒューマンキュレーションが行われていることを挙げている。
「Apple Musicは音楽ファンによる、音楽ファンのためのサービスでありたいと考えています。私たちの目標は、高品質な機能と優れたユーザー体験を提供することにありますが、足もとを支えているのが人間によるコンテンツキュレーション(レコメンデーション)の仕組みです。機械学習に基づくアルゴリズムだけに頼るのではなく、コンテンツを深く知る人間がプレイリストを作成していることもその一環です」



