国境なきストリーミングとクラシックへの挑戦
インターネットによるストリーミングプラットフォームが世界中に普及したことで、コンテンツの「国境」は事実上消失した。かつては特定の地域に限り、聴かれていた音楽や映画などのコンテンツが、今では世界中に広く拡散する。
その顕著な例として、シュッサー氏はJ-POPの世界的な躍進を指摘する。現在、米国やイタリア、ドイツなどのユーザーが日本のポップスやヒップホップを日常的に享受している。シュッサー氏によると、ラテンやアフロビーツなど世界のさまざまな文化をルーツとする音楽においても同じ現象が見られるという。
コンテンツクリエーションの面でも変化が現れている。GarageBandやLogic Proといった、アップルの音楽制作ツールは幅広い層のユーザーに使われている。今ではクリエイターが個人のスタジオや自宅でも空間オーディオのトラックを制作できる。
アップルは2023年に米国で、続く2024年には日本でもクラシック専門の定額制音楽配信サービスである「Apple Music Classical」を立ち上げた。これは、従来の音楽配信サービスでは解決が難しかった、クラシック音楽特有の課題に対応するためのものであると、シュッサー氏はサービスの特徴を説く。
なぜなら、クラシック音楽はポップスとは異なり、ひとつの楽曲に対して指揮者・演奏者・録音時期などが異なる膨大なバージョンが存在し、メタデータを付与する管理体系と、ユーザーにとっては意中のコンテンツを探すための検索条件がとても複雑になる。従来のApple Musicの仕組みではカバーしきれなかった。
「私たちは、インターネット上でのクラシック音楽の扱われ方に満足していませんでした。検索結果が数万件も表示され、顧客にとって何が良いのかを理解するのが非常に困難だったからです。そこでクラシック音楽愛好家の検索行動に最適化した、専用のアプリケーションをつくりました」
数百億件におよぶ独自のデータベースを新たに構築したことで、現在Apple Music Classicalでは作曲家や指揮者、年代などによる精緻な検索が可能だ。Apple Musicのサブスクリプション登録者は、追加料金なしでApple Music Classicalを利用できる。新しいサービスがより専門的な検索機能を必要とするクラシック音楽ファンから高い評価を得ていることから、Apple Musicのユーザー拡大にも結びついているようだ。


