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2026.02.25 08:30

世界2位のナベルが挑む売上高1000億円 卵生産の垂直統合モデル:南部隆彦×入山章栄

南部隆彦|ナベル

南部隆彦|ナベル

Forbes JAPAN 2026年4月号』では、規模は小さくても高い付加価値を誇る中小企業を表彰する「スモール・ジャイアンツ」を特集。激動の時代に、大胆に自らを変化させ、地域から世界に飛躍する「小さな巨人」を発掘するプロジェクトは9回目を迎えた。グランプリに選ばれたのは「卵の総合ソリューション企業」ナベル(京都市)だ。部門賞を含めスモール・ジャイアンツに選ばれた7社は、日本のモノづくりを独自のブランドに昇華させた。それらは単なる製造業を超えた「文化の製造業」や「感性の製造業」と言っても過言ではない。ファイナリストたちの新・成長モデルに迫る。

世界シェア2位を誇る「卵の総合ソリューション企業」ナベル。産業の川上から川下まで、顧客の生産性を最大化するビジネスモデルの核心に、経営学者・入山章栄が切り込む。


日本にはまだ、これほどまでにバイタリティあふれる企業が眠っていたのか──。スモール・ジャイアンツアワード2026のグランプリに輝いたのは、京都の産業装置メーカー・ナベルだ。鶏卵の選別やパッキングの装置など、卵の生産工程におけるあらゆるソリューションを提供し、世界シェア2位を誇る。今回、審査員を務めた経営学の旗手、入山章栄がナベル副社長の南部隆彦にインタビュー。躍進を支える独創的ビジネスモデルと、その根底に流れる哲学をあぶり出す。

入山章栄(以下、入山)ナベルは卵の選別やパッキングなど卵の生産にかかわるさまざまな装置の開発・製造を手がけています。国内ではシェアトップで、世界シェア2位。グループの売上高も100億円を超えている。海外売上比率もここ数年でほぼ半分に成長しているとのことで、海外展開はいつからやっているんですか。

南部隆彦(以下、南部)1992年にマレーシアに卵の選別包装装置を輸出したのが最初なので、30年以上になります。マレーシアの後は、台湾、東南アジア諸国、最近では米国に納品しました。現在、輸出先は80カ国に上ります。実は、スモール・ジャイアンツアワードでグランプリを受賞した直後の2025年12月、最新鋭の選別装置をコンテナに積んで米国にもっていきました。

入山:私の理解では、米国では卵の生産は養鶏場から卵の選別、パッキング、小売りに卸すところまで垂直統合で、大手がすべてを担っているイメージがある。その牙城に参入していくということですよね。

南部:そうなんです。僕も作業着を着て、スパナを持って納品に立ち会ったんですが……。

入山:スパナ持って一緒にやるんですか。

南部:やるんです。見ているだけではもったいないので、一緒に作業しました。その後、納品先のオーナーと面談したら「今後3年間で20台買いたいんだ」と。僕もびっくりしましたけど、よくよく話を聞くと、なんとその会社はグループ全体で4500万羽のニワトリを飼っているのだそうです。おそらく1日4000万個くらいの卵を生産していると思います。

入山:1日4000万個。ものすごい数ですね。

南部:その会社が全米で2位のシェアをもっています。幸先よくいいところに食い込めたな、と。

入山:ちなみにナベルの装置は、1時間にどのくらいの卵を選別できるんですか。

南部:米国にも納品した我々のいちばん大型の装置だと、1時間に24万個です。

入山:もう、検討がつかない。

南部:おっしゃる通りで、つくった僕ですら、1時間に24万個っていったいどんな量なんだろう……と(笑)。最もベーシックな装置は1時間3万個で、このスタジオに入るくらいの大きさですが、今までつくったなかで最も大規模なものは、全長が50mくらいになります。ボーイングの大型機が全長70mくらいなので、開発陣と「俺らも飛行機つくれるんちゃうか?」と話しています。

入山:卵って実は、巨大装置産業なんですね。

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文・構成=中居広起 写真=ヤン・ブース

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