重要な点は、この研究により、オオカミの協力戦略が創発的であると示唆されていることだ。これはつまり、個々が従うルールはごく単純なものであり、トップダウンの指揮系統があるわけではない、ということだ。オオカミの群れにおいては、「下位の個体に命令する厳格なリーダー」は必要とされず、むしろ、群れの個々のメンバーが、獲物や群れの仲間に対して自発的に反応し、それが全体として効率的な狩りを生んでいるのだ。
一方、狩りをしている時のライオンの群れにおいては、混沌としたダイナミクスがしばしば見られる。そういう意味では、オオカミとは極めて対照的だ。ライオンの群れでは、チームに対する忠実な協調よりも、個々の主体性が重みをもつ場合があるのだ。
オオカミの「数の力」とライオンの「強さ」
群れでの狩りという点で、オオカミがライオンよりも勝るもう一つの重要な理由は、オオカミの狩りの効力が、群れの規模によって増すことにある。さらに具体的に言えば、オオカミが柔軟なチームワークを得意とするのは、一つには、狩りの戦術が、群れの規模に応じて調整可能なこともその一因となっている。
『Behavioural Processes』掲載された研究では、空間的行動と時間的行動を分離し、オオカミの集団での狩りにおける動きのパターンを検証した。その結果、個々の行動が単純であっても、最終的には群れ全体の成功率を高めるかたちで協調した活動が生じることが示された。これはとりわけ、手ごわい獲物を相手にする場合にあてはまる。
ライオンも社会的に狩りをするが、重要な違いは、ハンターの数の増加から得られる利益が、オオカミと比べると、すぐに頭打ちになる傾向があることだ。前述の『Animal Behaviour』掲載の研究によれば、ライオンの狩りでは、群れの一部のメンバー(とりわけオス)が、狩りへの参加を控えたり、他個体の努力を搾取(横取り)する場合もあるという。
こうした現象を行動生態学者は、一種の「生産者と掠奪者」の違いとして説明している。もちろん、これはライオンの狩りが下手だという意味ではない。生態系によっては、ライオンは優れたハンターになる。ここで明らかにされているのは、ライオンのチームワークが、オオカミの群れに比べると一貫しておらず、自然に同調しているわけではないことだ。
さらに、走りながら狩りをするオオカミは、ライオンよりもはるかに粘り強い。長い距離にわたって獲物を追いかけ、忍耐強い追跡で獲物を疲弊させる。突発的なスピードや、忍び足の奇襲だけに頼ったりはしない。実際、オオカミの覚醒時間のうち、狩りに費やされる時間は、ほかのどの活動よりも長い。つまり、オオカミの狩りの成功は、直接的なパワーだけでなく、試行錯誤を通じて達成されるケースが多いということだ。


