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2026.02.25 11:00

UCC黒澤俊夫のDX戦略 兼務で実現したグループ一気通貫改革:CIO AWARD

黒澤俊夫|UCCジャパン 執行役員 ICT・デジタル担当 兼 情報セキュリティ担当

黒澤俊夫|UCCジャパン 執行役員 ICT・デジタル担当 兼 情報セキュリティ担当

AIを3カ月で現場に届けたリーダーは昔ながらの企業グループを一気通貫で改革。効率化の先に見えてきたのは、人に還るという適材適所の設計だった。

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「引き続き、空気を読まずにお願いします」。2021年、黒澤俊夫がユーコット・インフォテクノ社長を打診された際、UCCグループCEOの上島豪太にかけられた言葉だ。黒澤は「僕、メチャメチャ空気読んでますよ」と返したという。DXには摩擦がつきもの。だからこその人選だった。

黒澤は現在、UCCジャパンの執行役員に加え、グループのICT・デジタルを担うユーコット・インフォテクノ、受注から労務・経理まで労働集約型の実務を受託する日本パーソネルセンター(以下、JPC)のトップを兼務する。

もともと黒澤はUCCホールディングスのCIO / システム企画本部長として業務プロセスの改革を進めていた。だが業務効率化のメスを入れるほど、受注や労務人事の実務を担うJPCの領域に踏み込まざるを得なくなる。当時、「そのやり方では駄目だ」と伝えても動きは鈍かった。2025年1月、CEOから「JPCもあわせて社長を」と告げられる。ITを設計する組織と、それを使う組織のトップが同一人物になったことで、一気通貫の意思決定が可能になった。

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効果は明確だ。AIエージェントをインサイドセールスに導入した際、構築から稼働までわずか3カ月。6週間後にはVer2.のリリースも完了した。なぜ3カ月で立ち上がったか。「私が両方の社長をしているからです」。ただし3社を一人が率いる体制は、裏を返せば属人性のリスクもある。黒澤自身、57歳。2年前からサクセションプランに着手し、「僕が居なくなっても急には止まらない」と言い切る。

テクノロジーの速度だけがこの話の本質ではない。AIエージェントを実際に使うオペレーターの女性は、「最初は怖かった」と打ち明けている。AIが仕事を奪うのではないか、と。しかし架電前に40分かけていた事前調査が数分に縮まり、アプローチ先は倍増した。黒澤はこの女性を外部ツール活用の講演で壇上に上げている。リアルな声こそ面白い、と。

JPC着任時、最初に突きつけたのは「自分たちの価値は何か」という問いだった。労働集約型業務を標準化して外に出し、業務の集約だけで年間約1億円を削減した。2030年までにこうした業務の50%をAIエージェントに置き換える目標を掲げるが、狙いは人の再配置にある。JPCで入力業務に就いていた障がい者雇用の社員がクッキーの製造チームに移ったのも同じ文脈だ。「適材適所」は、マルチクラウドの設計だけでなく、人の配置にもそのまま当てはまる思想である。

今年1月、黒澤はCESの会場にいた。中国企業が出展したボクシングロボットが、実演中に動かなくなった。「でも、出展するんですよね。日本企業の競争力のカギは、保守的になりすぎないことだと思います」。空気を読まずに進む社長は、人の配置もテクノロジーも止めずに動かし続けている。


黒澤俊夫◎外資系企業を中心に25年以上のエンタープライズICT/デジタル領域に従事。2019年9月にUCCホールディングス入社。20年7月に執行役員CIO。21年6月ユーコット・インフォテクノ社長兼務、25年1月日本パーソネルセンター代表取締役社長も兼務し、現職。

文=本田賢一朗 写真=平岩 亨

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