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2026.02.25 10:30

三菱重工 伊藤社長が語る重厚長大の知能化戦略:CIO AWARD グランプリ

伊藤栄作|三菱重工業 取締役社長 CEO

伊藤栄作|三菱重工業 取締役社長 CEO

グランプリを受賞したのは、「重厚長大」を「知能化」に塗り替えた三菱重工業だ。AIを競争力の源泉へと昇華させたCTO出身の社長がコングロマリットの潜在力を解き放つ。

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一日最大1万2000〜1万3000箱を取り扱うキリングループの海老名物流センター。倉庫内ではパレットに飲料を積む装置やAGF(無人フォークリフト)・AGV(無人搬送車)が連携して動き、効率的なピッキングを実現している。例えば27箱を載せた在庫パレットから22箱を出荷する場合、従来は出荷パレットに1箱ずつ22回移していた。しかし、5箱だけを別の在庫パレットに移し、22箱残った元の在庫パレットを出荷すれば、ピッキングは5回で済む。

このように機械を「かしこく・つなぐ」ことで最適化する三菱重工のデジタルイノベーションブランドが「ΣSynX(シグマシングス)」だ。Σは総和、Synは同調・協調、Xは未来。その名の通り、さまざまなものを集めてシンクロさせ、未来の機能をつくるコンセプトだ。制御にAIが活用されているが、伊藤栄作はその意義をこう語る。

「ΣSynXは、シグマのピースが増えるほど価値が生まれます。物流ソリューションなら、自律移動する棚があればよく出る商品に合わせて昼と夜で位置を変えたり、ソーラーパネルを用意してAGVがバッテリー切れの前に自動で充電に戻るといったこともできる。このようにつなげるピースが増えるほどAIによる最適化が役に立ちます」

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AXが進んでいるのは、顧客向けのOT(Operational Technology)だけではない。ΣSynXのコンセプトは、社内のIT、つまり業務プロセスにも適用されている。三菱重工は30のSBU(戦略的な事業単位)を持ち、その技術分野は約700に及ぶ。幅が広いと技術情報がSBUごとにサイロ化するおそれがあるが、同社は技術のエッセンスを蓄積した技術基盤を活用して、グループ全体のR&D活動を一元化。その旗振り役が、当時CTOを務めていた伊藤だった。

「新製品を開発するときは、技術をシグマ的にかき集めてシンクロさせると、これまでにない機能をつくれる可能性がある。もともと技術基盤はありましたが、現在ΣSynXの考え方でさらに強化しているところです」

さらに各SBUに散らばった業務の知見をつなげ、リードタイムの短縮などさまざまな効果が見込める。あるSBUが直面している課題はほかのSBUが経験済みで、その知見があれば30日かかっていたものが数日で解決することもあるだろう。「AIツールをうまくつくれば、おそらく100倍1000倍規模の情報量のなかから必要なものとつながることができるでしょう。その効果は、私たちのようなコングロマリットほど大きい」。

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文=村上 敬 写真=平岩 亨

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