デンマーク政府はEV(電気自動車)に対する税の優遇措置を廃止することを発表した。この動きは2016年から開始され、2020年には優遇税制が完全に撤廃される。
デンマークでは自動車の登録税として車両価格の180%が課されているが、現状ではEV車にはこれが課されていない。テスラモーターズのウェブサイト上では、登録税の優遇措置が2015年末で終了すると記載されている。
これにより、テスラのモデルSの価格は現状の65万クローネ(約1180万円)から180万クローネ (約3260万円)に跳ね上がることになる。
米国ではモデルSは7万1000ドル程度で販売されているが、7500ドルの連邦税控除が適用され、州によってはさらに税優遇がある。EV車やハイブリッド車に対する税制上の優遇は、燃料消費を抑えた車の購入を促進する狙いがある。しかし、メーカーらに利益を与えるこの制度に関しては、議論も起こっており、特にフォルクスワーゲン社の排ガス不正問題の発覚以降、その動向が注目されている。
デンマークはなぜ今回の措置に踏み切ったのか。他のヨーロッパ諸国と同様、デンマークは近年、経済の停滞に直面しており、政府は財政の建て直しに躍起だ。デンマーク財務省の予測では、EV車への税優遇措置を来年も継続した場合、年間で6億5000万クローネ(118億円)の財政負担が生じることになる。
今回の決定をテスラ社のイーロン・マスクは、消費者に対する悪いシグナルだと見ている。「これはEVの歴史から見て、重大な転換点だ。税控除が来年1月に廃止されれば、EVの未来に大きなダメージがもたらされる」とマスクは語っている。
同様な動きはノルウェイでも始まっており、政府は2018年にも優遇措置の廃止を行うことをほのめかしている。ただし、ドイツなどは別の動きに出ており、経済担当大臣はEV車に対するインセンティブの引き上げの必要性を説いており、政府内部からも2015年末までにその決定を下すべきだという声が出ている。