なんだか調子が悪いからと医療機関に出向いても、症状を的確に医師に伝えるのは難しい。うまく言葉にできないことに加えて、時間を取らせては忙しい先生や待っている患者さんたちに悪いと恐縮する気持ちも働く。そのため、しっかりと症状を伝えられない人が非常に多いという。しかし医師は、きっちり話を聞いて適切な診断をしたいと考えている。そのギャップをどう埋めたらいいのだろうか。
医師とエンジニアが創業したヘルステックスタートアップUbie(ユビー)は、全国の20〜60歳代の男女1000人と、医師339人を対象に、医療アクセスに関する実態調査を実施した。それによると、患者の約50パーセントが、受診の際に症状やそれにともなう不安などを医師に十分に伝えきれなかった経験を持つことがわかった。一方、患者が自身の症状などをうまく伝えられていないと感じている医師は約80パーセントにのぼる。

患者が伝えられない理由は、どう伝えていいかわからない、時間を取ってはいけない、医師が忙しそうだったから、など。しかし、その無用な気遣いが、医師が望む短時間での効率的な診察を阻害している。
伝えきれなかった内容を具体的に聞くと、もっとも多いのが症状に対する不安や心配だった。続いて、症状の詳細、治療方針や内容に関する希望、日常生活での困りごとなどがあげられた。これに対して、患者がうまく説明できていないと医師が感じる事柄は、症状の詳細、持病や服用中の薬の情報、症状に対する不安、治療方針の希望、日常の困りごとなどで、患者と医師の意見がほぼ一致した。

そこで、患者と医師の気持ちのギャップを埋めるために、事前に症状や既往歴などの情報を記したメモを医師に見せるという方法があるのだが、そこでも医師に対する患者の心理が邪魔をする。たとえば、自分の症状に近いものをネットなどで調べてメモにまとめて医師に見せるのは、医師を信頼していないように思われそう、失礼だと思われる、情報を否定されそう、間違っていたら恥ずかしいなどの心理が働く。その結果、そうしたメモを医師に見せることに抵抗を感じる人が半数近くだ。

たしかに、患者が提示するネット情報などは、約40パーセントの医師が「参考になりにくい」と感じている。だが、それとは別に、医師が期待する情報がある。まずは「症状を時系列で整理」したものだ。続いて、「医師への質問や確認したいこと」、「既往歴、服薬歴」、「生活で優先したいこと、困っていること」など。これらをメモにまとめて医師に見せるのは、気兼ねする必要がないどころか、むしろ推奨されると思っていいだろう。
Ubie共同代表取締役で医師の阿部吉倫氏は、「双方が対等なパートナーとして向き合い、適切な情報に基づく対話を通じて信頼関係を深めていく」という意識や行動が新しい習慣として浸透することで、「医療の質や持続可能性を高める鍵になる」 と話している。



