経営・戦略

2026.02.20 07:15

訪日客増でも宿泊業の倒産続く 地方の老舗旅館が次々と消える理由

AdobeStock(写真はイメージです)

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帝国データバンクの調査によると、2025年に発生した宿泊業の倒産は89件となり、前年を上回って2年連続で増加したことがわかった。休廃業・解散は178件にのぼり、年間で計267件の宿泊事業者が市場から退出した。訪日客の需要が回復するなかでも、業界全体が一様に持ち直しているわけではない実態が数字から浮かんだ。

【調査概要】
集計期間:2000年1月1日~2025年12月31日まで
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産
2026年2月6日10:09 タイトルおよび内容を一部修正

地方に集中する倒産・休業

倒産や廃業は、首都圏、京阪神、中京の三大都市圏を除く「地方」に集中していた。発生割合は7割を超え、コロナ禍前の水準に迫っている。都市部と比べてインバウンド需要が限定的な地域では、稼働率や客単価が低い小規模旅館・ホテルの退出が目立つ。

需要は戻りつつあるものの、その恩恵が均等に行き渡っているわけではなく、また地域差も経営環境の差となって表れていることがわかる。

老朽化が示す投資余力の差

近年、倒産要因として「老朽化」「修繕」「故障」などが含まれるケースが増えている。直近5年間では全体の14.6%を占め、過去期間と比べても割合は上昇傾向にある。設備更新が困難となり、修繕費を確保できず事業継続を断念する事例も報告されている。

宿泊業は装置産業であり、一定周期でのリノベーションが不可欠とされる。一方で、コロナ禍に伴う債務増加や、実質無利子・無担保(コロナ禍で導入された政府の資金繰り支援策)の返済、人手不足、原材料高、光熱費の上昇といった複数のコスト圧力が同時に重なった。こうした環境下では、設備投資を継続できるかどうかが経営の分岐点となる。

二極化する宿泊業の市場環境

訪日客の回復に加え、富裕層を中心とした高付加価値サービスへの需要も拡大している。最新設備を備えた高単価施設に資本や人材が集まる一方で、投資余力に乏しい老舗旅館や中小ビジネスホテルの退出が進んでいる。

創業100年近い老舗として知られ、地酒を楽しめる宿として親しまれてきた富山県の「喜泉閣」(2025年3月破産)のように、歴史や知名度を有していても、老朽化した設備の修繕費を確保できず事業継続に至らなかった事例もある。老舗であることや一定の人気が、必ずしも経営の持続性を保証するわけではない。

一方で、名物料理など独自の強みへの評価を背景にスポンサーの支援を受け、事業再生にこぎつけたケースも少なくない。経営体力や資本の受け皿の有無が、明暗を分ける要素となっているようだ。

訪日客増という追い風のなかで進む宿泊業の退出。その背景には需要の有無だけではなく、老朽化、人手不足、物価高といった複数の経営要因が重なっている。とりわけ地方の宿泊業にはそれらの課題が集中的に表れた。デジタル対応や老朽化対策の成否による宿泊業の「サバイバル」は、この2026年にはさらに進む可能性がある。

プレスリリース

文=福島はるみ

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