ターゲット、ウォルマート、クローガー、スプラウツ、ホールフーズといった小売大手への展開は大きな賭けだった。食品スーパーは通常、ブランドに二度目のチャンスを与えないため、多くのブランドは時間をかけて需要を育て、店舗に導入する際に失敗しないよう慎重に準備する。しかしフォレイカーは、そうした慣行に従わず、拡大を優先し、2018年にニューヨーク拠点のCavu Consumer Partners(食品・飲料分野に特化する起業家で投資家のローハン・オザらが共同設立)が主導するシリーズBで2000万ドル(約31億円)を調達した。さらにガーナーも新規導入店舗を自ら訪れ、顧客の関心を高める活動に力を注いだ。その結果、展開した店舗の約90%が現在もOnce Upon A Farmの商品を取り扱っているという。
「私たちが目指していたことを実現するには、最初から大きく勝負に出るしかなかった。何が起きてもおかしくなかった」とフォレイカーは振り返る。そのうえで彼は、「当時、私たちの拡大戦略を受け入れ、付き合い続けてくれた小売業者は、いまや当社との取引で大きなビジネスを築いている」と語った。
ガーナーもこう続ける。「私たちは、子ども向け食品やベビーフードをまったく新しい視点で捉え直そうとしていた。広く人々に知ってもらうには、大きな声で発信しなければならない。どう進めるべきか悩んだが、最終的には“手を取り合って飛び込もう”と決めた」
ガーナーとフォレイカーは参画後まもなく、同社製品を米国の低所得者向け栄養支援制度(WIC)の支払い対象とする承認を取り付けた。これにより、Once Upon A Farmは冷蔵のオーガニック食品として初のWIC認定ベビーフードとなった。一方、フォレイカーはパッケージの刷新も主導した。より鮮やかな色使いを採用したことで、店頭の棚で商品が目立つようになり、売上はほぼ即座に倍増したという。
その後、フォレイカーとガーナーは、全体の消費量の80%が乳児ではなく1歳児から幼児層によるものだと気づいた。そこで2019年にはパッケージを見直し、「砂糖不使用」のレシピを強調するとともに、新生児のイメージをラベルから外した。さらに、最大の投資家であるCavu傘下のエージェンシーの協力を得てブランドを大幅に刷新し、より大胆でモダンなデザインへと変更した。このリブランディングにより、販売速度は再び倍増した。
Once Upon A Farmの2021年の売上高は前年から倍増し、同年にはシリーズCラウンドの一環として、転換社債を通じて2280万ドル(約35億3400万円)を調達した。
同社はさらに2021年、デラウェア州のパブリック・ベネフィット・コーポレーション(公共利益法人)へと法人形態を変更した。これにより、短期的な利益最大化につながらない場合でも、社会的・環境的目標を追求できる体制を整えた。
多くのセレブ投資家とは異なり、ガーナーは同社が成長軌道に乗った後も経営に深く関わり続けている。彼女は全米を飛び回り、バイヤーとの商談や小売業者との面談に参加し、Once Upon A Farmの商品について直接説明している。


