経営・戦略

2026.02.20 15:00

香港の不動産大手が、数千億円の巨大複合開発とグリーンテック戦略を両立させる理由

香港のセントラル地区にある超高層ビル「The Henderson」(YASEMIN OZDEMIR/Shutterstock.com)

香港のセントラル地区にある超高層ビル「The Henderson」(YASEMIN OZDEMIR/Shutterstock.com)

香港の不動産市場が歴史的な低迷期にあえぐ中、香港屈指の不動産・エネルギー帝国「ヘンダーソン・ランド・グループ(恒基兆業地産)」の共同会長を務めるピーター・リー(62)とマーティン・リー(54)兄弟が、大胆な次世代戦略に打って出た。

リー兄弟の計画は、対照的な2つの柱からなる。第1の柱は、圧倒的な優良資産で足元を固める「守り」の投資だ。金融の中心地である中環(セントラル)の1等地で、数十億ドル(数千億円)規模を投じる超大型複合開発を進める。第2の柱は、クリーンエネルギー分野への大規模な「攻め」の投資だ。傘下の公益企業を通じ、グリーンテクノロジー事業を既存の不動産事業に匹敵する収益の柱に育てる計画を進めている。

現在、欧米を中心とするグローバルなビジネスおよび投資の世界では、伝統的な不動産や化石燃料インフラに依存する企業に対し、脱炭素(ESG)に向けた事業ポートフォリオの転換が強く求められている。リー兄弟の事業転換は、こうした世界の常識に合致した必然のサバイバル戦略ともいえる。巨万の富と重圧を受け継いだ2代目は、いかにして帝国を再構築しようとしているのか。

父から引き継いだ不動産とエネルギー事業を、2つの投資の柱で発展させる計画

2025年12月のある午後、ピーター・リーとマーティン・リーの兄弟は、広さ630平方メートルというガラス張りのボールルーム、「クラウド39」に足を踏み入れた。そこは、香港の商業中心地・中環(セントラル)に位置する、高級オフィスタワー「ザ・ヘンダーソン」の最上階36階にある。

リー兄弟は、香港の金融の中心地と象徴的なビクトリア・ハーバーの広大な景色を望むこのボールルームを舞台に、フォーブス・アジアの取材に応じた。

この日のインタビューは、リー兄弟にとって2020年初頭以来の本格的なものとなった。彼らは、2025年3月に97歳で亡くなった父リー・ショウキー(李兆基)が築いた不動産・エネルギー帝国を、いかに次の時代に引き継ぎ、発展させていくかを語った。

数千億円規模の大型複合開発など「守り」の不動産投資と、グリーンテクノロジー分野への「攻め」の投資

その戦略の柱は、大きく分けて2つある。1つは、中環で進める2件の数十億ドル(数千億円)規模の大型複合開発を通じて、「守り」の不動産投資を一段と強化すること。もう1つは、今後10年で既存の不動産事業に匹敵する売上規模に育つと見込むグリーンテクノロジー分野に、「攻め」の投資を行うことだ。

2019年にヘンダーソン・ランドおよびエネルギー会社の香港中華ガス(タウンガス)の共同会長職を引き継いだリー兄弟は、民主化デモやコロナ禍、深刻な景気後退、そして米中貿易摩擦といった、さまざまな試練に直面した。「父は、不動産と公益事業の両方で、非常に強固な基盤を残してくれた。厳しい時期にあっても、私たちは最良の立地にある最良の資産を保有してきた」とピーターは語る。

「不動産は引き続き安定した収益をもたらすが、将来の成長を牽引するのはグリーンテックのような新興分野になる」と彼は説明した。マーティンは、「5年後には、中環で進めている商業開発が完成し、グリーンエネルギー事業も軌道に乗り始めるはずだ。私たちの未来は明るいと確信している」と続けた。

時価総額が約5.9兆円に達する「ヘンダーソン・ランド・グループ」

1976年に父リー・ショウキーが創業したヘンダーソンは、上場企業7社に出資している。その中にはヘンダーソン・ランド株の73%とタウンガス株の42%が含まれる。ホテルや百貨店、フェリーなどにも事業を広げており、関連各社の時価総額は合計3090億香港ドル(約5.9兆円。1香港ドル=19円換算)に達している(2026年1月下旬現在)。兄弟は、家族とともに349億ドル(約5.4兆円)の資産を保有しており、フォーブス「香港長者番付」で第2位に位置している。この順位は、2025年まで父が占めていた。

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翻訳=上田裕資

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