ここ1カ月ほど、SNSなどでは、2016年と2026年のトレンド比較が興味深い盛り上がりを見せた。10年前を振り返っていると、ある種の奇妙な安らぎを覚える。今ほどノイズが多くなかった頃を思い出させてくれるからだ。先行きが見えない不確実な現代において、ノスタルジーはいまや、目の前のことに対処するための防衛メカニズムになっている。
そうしたなかで、タイムリーな疑問が浮かんでくる。2016年のファッションや働き方、コミュニケーションの取り方を振り返ったのだから、当時のリーダーが人々をどう率いていたのか、リーダーの言葉がここ10年でどのように静かに変化してきたのについて、振り返ってみるのも興味深いのではないだろうか。
2016年の職場を振り返ると、交わされる情報やメッセージは、上昇志向あふれる業界用語や、聞こえのいい決まり文句が入り混じっていた。真実を明らかにするというよりは、むしろ覆い隠すものが多かった。会議やメールでは、企業特有の表現が定着し、例えば、「今こそピボット(方向転換)すべき時だ」といったフレーズが支配していた。
時は進んで2026年。リーダーの言葉には、いつまでも消えない社会経済の不確実さや、分散した労働力、倫理が問われるテクノロジー、従業員の自律性といったものに象徴される世界が反映されるようになった。リーダーが今、仕事をどうとらえているのかを見れば、今の組織が大事にしていることが明確になり、影響力と文化がどこで交わるのかが見えてくる。
2016年のリーダーが発していたフレーズと、その真の意味
『The Future of Commerce』で2016年12月に掲載された、その年を振り返った記事から、2016年に頻繁に使われていたバズワードを紹介しよう。
・「われわれにはアラインメントが必要だ(足並みを揃える必要がある)」:しばしば、すでに決定が下されたあとの「意見の一致」を意味するフレーズ
・「われわれの持つリソースをレバレッジ(活用)しよう」:優先順位や責任、実行役を明確にしないまま行動することを示唆するフレーズ
・「われわれにはピボット(転換)が必要かもしれない」:方向転換を正当化するために使われる表現。ほとんどのケースでは、なぜうまくいかなかったかは説明されない
・「こちらからリーチしてフォローアップします」:決断や説明責任を先送りする時に使われる丁寧なその場しのぎのフレーズ
・「これで状況が動くはずだ」:インパクトを示唆するフレーズだが、同時に「成功の定義」が示されることはめったになかった
実際には、こうしたフレーズが盛んに使われたのは、いかにも行動志向であるように聞こえたからだ(説明責任の要求は明示されないままで)。これらは、手軽で簡潔だが、具体性に欠けたフレーズだった。



