株価を上げることが経営者の最大の使命――。そんな考えが支配するアメリカから日本をはじめ世界へ広がる形で、金融危機は繰り返されてきた。過熱するほど格差が広がるマネーゲームのツケを払わされるのは、金融業ではなく実業の人たち。それでもこの構造は見直されていない。
シリコンバレーで全米屈指のベンチャーキャピタリストとなり、各国政府の顧問を歴任してきた事業家・原丈人氏が「誠実な仕事とは何か」を問い直す『THE BEST WORK 「最高の仕事」を生きる』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けする。
アメリカは反省していない
アメリカでは「会社は株主のもの」という考え方を根本に据えた「株主資本主義」が主流になっている。しかし、短期での儲けを追求するこの商売のあり方は、何度も金融危機を引き起こしてきた。
2008年、投資銀行のリーマン・ブラザーズが経営破綻。負債総額は史上最大の約64兆円。その直後、大手の生命保険会社AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)も経営危機に陥っていく。
世界中に「次はどこか?」という疑心暗鬼が広がり、金融機関どうしの短期のお金の貸し借りも滞って、世界のお金の流れがストップしたことで世界経済が大混乱となった。
これが「リーマン・ショック」だ。
その始まりは低所得者向けの住宅ローンを証券化した金融商品が不良債権化した「サブプライムローン問題」にあったが、原因の根本を突き詰めると、それは「会社は株主のもの」という前提を受け入れてしまったアメリカ式経営にある。



