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2026.02.25 16:00

働く人の本能を放つ―誕生!TORANOGATE。建築家・小堀哲夫が手がけた「生きた建築」

2027年、虎ノ門に誕生する複合オフィスビル「TORANOGATE」。建築を担ったのは日本の二大建築大賞を同時受賞した建築家・小堀哲夫だ。目指したのは、「人の野性を呼び覚ます」働く場という。そこは、どのような環境か。建築家とブランディングディレクターが語り合う。


2027年10月竣工予定のTORANOGATEは、地下4階地上29階の大型複合施設。オフィスをはじめ、低層部には商業施設やイノベーション拠点などが整備される。開発を進めるのは、虎ノ門一丁目東地区市街地再開発組合だ。デベロッパーである中央日本土地建物が参加組合員幹事企業として開発事業推進を担う。

プロジェクトの着想は17年ごろ。当初から施設全体をトータルブランディングする手法が検討され、クリエイター向けのシェアスペース運営に20年以上携わるなどクリエイティブな拠点開発に長けた春蒔プロジェクト代表・田中陽明(写真左。以下、田中)が開発チームに招かれた。当時の街の開発状況を、田中はこう振り返る。

田中:都心の再開発が盛んだったころで、虎ノ門もエリア間競争の真っただなかにありました。そのなかでいわば後発で新規開発をすることになる。デベロッパーには、これまでのやり方をなぞるだけで本当に生き残れるのかと強い危機感がありました。その後のコロナ禍を経て「効率的な作業場なら自宅でいい」とオフィスへの価値観や見方も変わり、従来とは異なる設計を強く望まれました。

そこでこだわったのが、ひとりの才能に頼るのではなく、多様な知恵をかけ合わせる「集合知」による開発です。これは私自身が得意としている考え方でした。施設のオリジナリティを考えるために、私と小堀さんをはじめ、ランドスケープなどのデザイナー、地権者、デベロッパーなどが対面で集い、ワークショップを行いながら「都市にとってTORANOGATEがどういう存在になるか」「働くとは何か」といった、根本的な問いを共有するところから開発を進めました。

KEY WORDS 「集合知」
多様な専門家が対等に知恵を出し合い、ひとりの才能を超える解決策を導き出すプロセスを指す。職能を越えた対話により、個の知性が昇華される開発プロセスをたどったTORANOGATEの知的な態度を示す概念となっている。

小堀:ワークショップはかなりの回数が実施され、アイデアを出し合いましたよね。大規模開発としては極めて異例に感じました。全員で知恵を絞り出す「勉強会」のような時間が何度も続いた。建築家、デザイナー、設計者、デベロッパーが、互いの領域外のことでも議論してもいいという心理的安全性がある場でした。

TORANOGATEの建築を担当した建築家・小堀哲夫。
TORANOGATEの建築を担当した建築家・小堀哲夫。

都市への態度を示す「市中の山居」と「迎える門」

田中:小堀さんはこれまでも、数々の企業のイノベーションセンターを手がけてこられました。特に17年には、ワーカーの行動と心理を徹底的に分析し、知的生産性を高める空間を具現化した「ROKI Global Innovation Center -ROGIC-」で、日本建築学会賞とJIA日本建築大賞をダブル受賞するという極めてまれな快挙を達成された。まさにイノベーション建築の先駆者であるので開発チームにお声がけしたわけですが、一連のワークショップを通じて、どのような建築を目指そうと思われましたか。

小堀:これだけのビルが立っているなかでの再開発ですから単なる複合ビルではなく、都市に対する佇まい、つまり「都市への態度」を示すような表現が必要だと考えました。さらにそうした建築では、都市にいても、働くことが自然や土から切り離されていない場所を構想したかった。ワークショップでの議論で出てきた「市中の山居」はアイデアの核でしたね。これは茶の湯の世界で使われてきた考え方で、人間は都市での生活にそうした居心地を求めてきた。自然との対峙を通じた身体感覚を得られる場所にできないかと考えました。

KEY WORDS 「市中の山居」
室町時代の茶の湯文化に端を発する。街のなかに山住まいのような草庵をもち、街中の喧騒と精神的な静寂を両立させようとする空間美学であり、日本独自の思想。TORANOGATEの建築や設計の核心を成す空間の考え方。

田中:まさにそうした議論を交わすなかで、「インクルーシブゲート」「閃き」といったコンセプトが練られてきました。18年ごろから注目され始めていた「ウェルビーイング」の概念も議論されましたね。住宅設計のような情緒的なアプローチこそが、結果として人間本来の能力や創造性を最大限に引き出すのではないかと。小堀さんは「門」という文字にも注目されていましたね。

小堀:閃きという字ですが、門の下に人の字を当てていますね。門の下に人が集まるような場所は民主化が進んだギリシャ時代、アテネのパルテノン神殿にあった門「プロピュライア」を想起させますね。

古代、もともとは防御のために人を締め出す装置だった門が、ギリシア時代になると、人々を「ようこそいらっしゃい」と迎え入れる場所に変わっていった。TORANOGATEが目指す「門」も、プロピュライアのような、人が物思いにふけったり、交わったりする象徴でありたい。

市中の山居であり、人を迎えるゲートとなること。最初のスケッチでは、まず光が入り、風が抜け、そして緑がポーラス(多孔質)状に、いろいろな居場所がちりばめられているような想像をしました。これらを具現化するために、1階から4階までをらせん状につなぐテラスを設計しました。ここで働く人は、外気や風を感じ、緑を眺めながら移動することになります。

それによって、身体的な行為や五感の刺激を得られ、人間本来の野性や直感に訴えられるのではと考えました。面積あたりの集積を最大化するような合理的な考え方とは異なった、いわば「余白」を多く設けた。日本建築でも、縁側のように外と内をゆるやかにつないでコミュニケーションを取れる設計が昔からありましたよね。効率を追求する都市生活で、閉じかけていた人間の身体感覚や感性を開くために、あえて設計された「ゆとり」、イノベーションの源泉をちりばめました。

TORANOGATE 全景。虎ノ門駅直結、虎ノ門ヒルズ駅至近。地下4階・地上29階・高さ171.31m。低層部には商業施設、2~5階には官民共創による(仮称)虎ノ門イノベーションセンターを設置予定。オフィスフロアは6~28階で、各階に共用部のバルコニ ーが設置される。屋上には庭園とラウンジを設置。2027年10月竣工予定。写真左が北面、右が南面。
TORANOGATE全景。虎ノ門駅直結、虎ノ門ヒルズ駅至近。地下4階・地上29階・高さ171.31m。低層部には商業施設、2~5階には官民共創による(仮称)虎ノ門イノベーションセンターを設置予定。オフィスフロアは6~28階で、各階に共用部のバルコニーが設置される。屋上には庭園とラウンジを設置。2027年10月竣工予定。写真左が北面、右が南面。

合理性とは別の角度から「地霊」を取り込む

田中:人の五感に訴えたり、野性的な感覚に訴えるという意味では、ランドスケープデザインを担当したランドスケープ・プラス代表の平賀達也さんのコンセプトも重要でした。虎ノ門の土地の意味を関東平野全体に視野を広げ、地形や歴史も考慮して読み込んでいかれた。

小堀:平賀さんとは初めてのコラボレーションでしたが、土地が永遠にどこまでもつながっているという感覚があるのは非常に新鮮でしたね。

建築は敷地という境界を与えられますが、敷地の外をどう考えるか、外とどうつなげるか、場所の歴史や思想をどう含めるかを考える視点になりました。つまり建築は単体で立つのではなく、いわば状況的につくっていかなければならない。モダニズムの時代は世界中どこでも同じ建築を理想としましたが、ランドスケープの考え方はむしろ逆で、その場所に固有でありながら、都市の流れを敷地境界で途切れさせないことが重要。この建物のプログラムは、まさにそれができています。「玉川上水」がひとつのキーワードですものね。

田中:そうなんです。玉川上水は江戸時代初期ごろ、江戸の街に主に飲料水供給を目的に引かれた水路です。虎ノ門にはこの玉川上水の重要な配水拠点としての顔がありました。今回、こうして場所のアイデンティティを考えてコンセプトに落とし込んでいますが、これはノスタルジックな仕掛けを考えたかったのではなくて、「ゲニウス・ロキ」といった概念をもち込んだのです。

KEY WORDS 「ゲニウス・ロキ」
土地(Loci)を守護するとされた精霊(Genius)を崇めた、古代ローマの民間信仰が語源。1970年代に建築理論家ノルベルグ=シュルツが、地形や歴史、光、風土などが生み出す「場所の魂」と再定義。人々の精神に訴える土地固有の性質を指す。

ここで働く人たちにとって、単なるビルにいるのではないといやがうえにも意識させる巨大な装置として機能させたいと考えました。具体的な設計としては、TORANOGATEの高さは、江戸時代に重要な水路だった玉川上水のスタート地点とほぼ同じ標高にあることに着想し、「超高層循環水景システム」を実装したのです。TORANOGATEの屋上庭園から雨水等を自然流下させて、その水が南側のバルコニーを蛇行しながら流れ落ちる仕掛けを実装しました。

KEY WORDS 「玉川上水」
1653年、江戸の飲料水不足解消のため羽村から四谷まで開削された約43kmの導水路。虎ノ門付近は江戸城内へ水を送る配水拠点だった。高度な測量技術を用いた自然流下式による水の道は、江戸の街の発展を支えた大動脈であった。

玉川上水を垂直方向で再現した仕掛けで、壁面全面が広大な緑地帯になります。こうした設備を盛り込めたのは、小堀さんはもちろん、デベロッパーはじめ開発チームのみなさんがポジティブに受け止めてくださったからに他なりません。

(上左)小堀によるTORANOGATEのコンセプトスケッチ。「都市の中に人間の居場所をつくる」と題され、低層部の風と光の抜け道などが描かれている。(上右、下) 玉川上水がモチーフの超高層循環水景のイメージと、実際の玉川上水の全体図。建物屋上に上げられた水は各フロアを巡り、地下1階のカスケードに流れ着く。実際の玉川上水のように、流域や水の循環を表現した仕掛け。
(上左)小堀によるTORANOGATEのコンセプトスケッチ。「都市の中に人間の居場所をつくる」と題され、低層部の風と光の抜け道などが描かれている。(上右、下)玉川上水がモチーフの超高層循環水景のイメージと、実際の玉川上水の全体図。建物屋上に上げられた水は各フロアを巡り、地下1階のカスケードに流れ着く。実際の玉川上水のように、流域や水の循環を表現した仕掛け。
TORANOGATEのトータルブランディングを担当した春蒔プロジェクトの田中陽明。
TORANOGATEのトータルブランディングを担当した春蒔プロジェクトの田中陽明。

「生きた建築」のなかで働くことを問い直す

小堀:ビルのコンセプトや思想は、とてつもない広がりをもっていますね。ここで働くことは、単に通勤という行為以上に、世界とつながることなんだという発想になりそうです。

田中:自然の摂理とともにあるような建築や人間としてより本能的にいられる場所という意味で「生きた建築(ライブ・アーキテクチャー)」だととらえています。歴史の深さを体感でき、外に開かれた低層部で自然を感じることで、思考が整えられる。そういう感覚は都心に来ると忘れてしまうようなものですが、TORANOGATEはそれらを強烈に呼び起こす場所になるでしょう。

小堀:ここに入居する方々も生きた建築の一部とも考えられます。あらためて振り返ると、今回は建築家にとっては「設計とは何か」を考える機会でした。設計とは、要件をまとめてデザインすることですが、このプロジェクトにおいては「都市と人々を編集していくこと」でした。

田中:TORANOGATEは霞が関の隣でもあるので、官民で社会課題解決や社会的インパクト創出・活性化を目指すオープンイノベーションゲートとしてのミッションも担っています。

そのためイノベーションセンターは4,5階のメインフロア以外に、2階や3階のエントランス周辺にも点在させています。社会性と経済性が調和した活動を通行人や働く人たちに日常的に見せることで「自分は何のために働くのか」「自分は何に人生の時間を費やしていくのか」という内省や気づきにもつながるのではと思うのです。近隣の官僚など多様な方々が入りやすいような仕掛けも検討されており、既にいくつかのプロジェクトが始まっているようです。

小堀:一般的に、ビルのオフィスエントランスはきれいにかつゴージャスに見せることでそのビルの価値を発信することが多いと思いますが、TORANOGATEはイノベーションセンターやラウンジ、カフェも併設されますから、ひとつの都市の縮図のようです。

オフィスフロア南側のバルコニー。屋上庭園からの水が流れる小川が特徴で、水流の音が心地良い空間となりそうだ。
オフィスフロア南側のバルコニー。屋上庭園からの水が流れる小川が特徴で、水流の音が心地良い空間となりそうだ。
屋上に創られる庭園。近くにはラウンジも併設され、職場にいながら季節感や非日常を味わえる“市中の山居”となる空間だ。
屋上に創られる庭園。近くにはラウンジも併設され、職場にいながら季節感や非日常を味わえる“市中の山居”となる空間だ。
低層部テラスは、小堀がスケッチしたように風が抜け、人々の行き交いが感じられる開放的なデザインとなっている。
低層部テラスは、小堀がスケッチしたように風が抜け、人々の行き交いが感じられる開放的なデザインとなっている。
2~5階にかけて点在するイノベーションセンターはコミュニケーションが生じやすくなるような、抜けのよい開放的な設計。
2~5階にかけて点在するイノベーションセンターはコミュニケーションが生じやすくなるような、抜けのよい開放的な設計。

田中:ダイナミックな余白を多くもつ建築だからこそ、完成した後の変化をどう受け入れていくかという運営の視点が、これまで以上に重要になります。

小堀:そうですね。今後期待したいのは、この余白に対しての、変化を受け入れ続けるためのフレーム(枠組み)ですね。建築は一度完成すると形を変えることはできませんが、その中身や使い方は、時代の要請や人々の意識に合わせてどんどん変わるわけですから。

田中:多くの人が「時間の質」や「自分の生き方のプライオリティ」を問い直すなかで、ハードが制約を課すのではなく、ここに来ることで深い思考が許され、その中身が更新され続ける。そのプロセスが、結果として働く人の人生を豊かにしていく。そんな場所でありたいですね。

実は基本設計後、コロナ禍での資材高騰がありました。我々にとっては大きな試練でしたが、同時にそれは、生きた建築の必要性を確信できるプロセスでもありました。大幅なコストダウンを迫られるなか、水や緑、光や風などの要素こそがアフターコロナに求められる働く場の本質だと、効率の先にある手触り感こそが、次世代の社会をつくる拠点の生命線になると信じることができたからです。

小堀:働くことや生きることに対して、何らかの発見ができる場所になると良いなと思います。水も流れ、風が吹き抜け、緑が揺れ、光が入ってくる。生きた建築であるTORANOGATEは訪れる人々にとって、単に職場に来るという行為を超えて、市中の山居に入って自分の生き方を探り、自分の才能や可能性に気づく場所になる。

本来は美術館のような場所がもつ機能に近いかもしれませんが、私はこれからのオフィスビルも、そうした役割をもってよいと思うんです。むしろ、これからの時代に本当に必要とされるオフィスビルの姿ではないかと思います。

虎ノ門一丁目東地区市街地再開発組合
https://www.toranogate.jp/


こぼり・てつお◎建築家、法政大学教授。1971年生まれ。久米設計を経て2008年に独立。2017年に日本建築学会賞とJIA日本建築大賞をダブル受賞、2019年にもJIA大賞を受賞。海外でも特別賞を受賞するなど活躍。

たなか・はるあき◎春蒔プロジェクト代表。1970年生まれ。武蔵野美大卒、慶応院修了。大手ゼネコンを経て2005年に独立。co-labの運営や大規模再開発のコンセプト立案などブランディングディレクションを行う。

Promoted by 虎ノ門一丁目東地区市街地再開発組合 | text by Rie Suzuki | photographs by Yutaro Yamaguchi | edited by Asahi Ezure