モビリティ

2026.02.18 16:00

航空機・戦車から乗用車まで「自動運転」化を目指す、米ユニコーンApplied Intuition

Applied Intuition CTOのピーター・ルートヴィヒ(写真左)とCEOのカサール・ユーニス(同右)(C)Applied Intuition

採石場の無人トラックと公道走行の高いハードル

12月の明るい午後、カリフォルニア州スノールにある古い砂利採石場では、大型の建設用ショベルカーが、40トン級の黄色いコマツ製トラックの荷台に土砂を積み込んでいた。トラックは数百メートル先の投棄場所に土砂を降ろすと、再びショベルカーのもとへ戻る。この作業を、その日が終わるまでに十数回繰り返す。

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近い将来、このトラックは完全無人運転に移行する見込みだ。現時点では、安全ドライバーが乗り込み、近くの小さなトレーラーにはAppliedのエンジニア4人が待機している。彼らは高解像度の映像や各種センサーのデータを凝視しながら、こうした「LHD(積み込み・運搬・荷下ろし)」サイクルの一挙手一投足を監視している。

Appliedの自動化産業部門を率いるジョー・フォーカッシュは、キャタピラーで25年間ロボット車両の開発に携わってきた人物だ。彼によれば、鉱山では自動化トラックが長年使われているものの、その運用は限定的だったという。「障害物が現れると、車両はそれを回避できない」と彼は言う。Appliedのシステムは、岩石や大型車ほどの大きさの穴といった一般的な障害物を自律的に回避できることを売りにしている。

こうした産業用トラック向けの自律走行ソフトの開発は、公道を走る車両よりもはるかに容易だ。公道では、突然現れる三角コーンや二重駐車のパトカー、スマートフォンに気を取られた歩行者など、予測不能な要素が数多く存在するからだ。

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いすゞ自動車との実証実験で見えた「合流・車線変更」の課題

そうした難しさがある中でも、日本の商用車大手いすゞ自動車は、Appliedとの協業を通じて、自動運転配送トラックの開発を進めている。いすゞの自動運転プログラムを統括するゼネラルマネージャーの矢澤康宏は、「早ければ2027年にも市街地を走行する可能性がある」と語る。2025年秋に日本で実施した初期テストでは、有望な結果とともに課題も明らかになっており、合流や車線変更では改善が必要だという。

Appliedの乗用車向けの完全自動運転技術も、まだ本格導入の段階には達していない。サニーベール周辺での短時間の走行テストでもそれは明らかだ。走行ルートの起動に遅れが生じるほか、テスラの不安定な「フルセルフドライビング」システムに似た軽い挙動の揺れも見られる。公道での広範なテストや外部からの検証が行われていないため、Appliedのプラットフォームの実力を客観的に評価する技術分析は限られている。

少なくとも現時点では、世界第4位の販売台数を誇る自動車大手ステランティスは慎重姿勢を崩していない。Appliedは来年、ステランティスの生産ラインから出荷されるジープやプジョー1台ごとに一定の使用料を受け取るが、「車内インテリジェンス」向けソフトの契約に自動運転技術は含まれていない。「自律走行の開発は一部を社内に残す」とステランティスの最高技術責任者(CTO)、ネッド・キュリックは述べている。

Appliedの「すべてを自動化する」という全面展開の戦略を、事業リスクを分散する巧みな一手だと評価する支持者もいるが、批判的な見方もある。ある業界関係者は匿名を条件に、「彼らは手を広げすぎている。過大な約束を掲げ、目新しいものに次々と飛びついている」と語る。

テスラやウェイモだけでなく、エヌビディアやWayveなど新勢力とも激しく競争

仮にAppliedが本格的に自動運転車の競争に参入すれば、テスラやウェイモだけでなく、多数の競合と向き合うことになる。半導体大手エヌビディアは2026年1月、テスラ型の自動運転ソフトを開発していると発表し、Nuroやモービルアイ、Motionalといった企業がひしめく分野に加わった。ロンドン拠点のWayveも手強い存在だ。同社は、さまざまな車両に適用可能な汎用自動運転技術を開発している。「我々の潜在市場は、動くすべての乗り物だ」と、総額13億ドル(約1989億円)を調達してきたWayveのCEO、アレックス・ケンドールは語る。

Appliedはすでに1件、Wayveに案件を奪われている。日産は運転支援技術の検証にAppliedのシミュレーターを利用しているが、自動運転ソフトについてはWayveを採用した。ただしユーニスは、Wayveが日産から獲得した自動運転ソフトの契約よりも、自社が日産と結んでいる別の取引の方が規模は大きい可能性が高いと主張している。

自動車向けOSやシミュレーション事業、そして「退屈で、汚く、危険な」産業用車両の自動化で先行するAppliedは、賭けを広く分散してきた。この戦略は前回の自動運転ブームの時期にうまく機能した。当時、多くの企業が姿を消す中で、Appliedは成長を続けた。今回も同じ戦略が通用する可能性は十分にある。自律化の波がどこへ向かおうとも、ユーニスはその流れに乗るための好位置にいる。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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