2025年の売上高は約1224億円、粗利益率80%を叩き出す高収益モデル
ワンストップで技術を提供するモデルは、ごく基本的なソフトウェアさえ十分に扱えずにきた自動車メーカーにとって魅力的だ。フォルクスワーゲンは、テスラに対抗しようと数十億ドル(数千億円)と数千人のエンジニアを投じたが、最終的にその技術は破棄され、CEOは突然辞任に追い込まれた。同社はその後、外部委託したコードの統合作業に奔走した。フォードも同様の問題でリコールを余儀なくされた。
また、2025年は信頼性で知られるトヨタでさえ、ソフトウェアの不具合を修正するために、世界で合計200万台超をリコールした。
そんな中で、Appliedは2025年、2024年の2倍にあたる約8億ドル(約1224億円)の売上高を計上した。同社はその成長を続けながら、少なくとも80%という高い粗利益率を維持している。Appliedを支援するブラックロックやアンドリーセン・ホロウィッツ、クライナー・パーキンスといった一流投資家は、この成長とユーニスの構想を高く評価している(投資家で取締役のマーク・アンドリーセンは最近、Xへの投稿でユーニスを「誰も知らない最高のAI CEO」と称した)。
評価額約2.3兆円、投資家が約918億円を追加出資
2025年6月には、投資家が6億ドル(約918億円)を追加出資し、同社の評価額は150億ドル(約2.3兆円)に上昇した。累計調達額は11億ドル(約1683億円)に達している。フォーブスは、持ち株比率を基に、ユーニスと共同創業者で最高技術責任者(CTO)のピーター・ルートヴィヒの純資産を、それぞれ15億ドル(約2295億円)以上と推定している。ユーニスは「創業以来、ほぼずっとキャッシュフローは黒字だ」と語る。
陸海空の全領域を単一プラットフォームで自律化することを目指す
Appliedは、単に車の性能を高めるだけでは満足しておらず、車両を自律的に走らせようとしている。同社は、すでに自動車向けOSの一部として運転支援機能を提供しているが、ユーニスが掲げる究極の目標は、地上を走り、水上を進み、空を飛ぶあらゆる乗り物に導入可能な単一の自動運転プラットフォームの構築であり、その対象はF-150ピックアップトラックからF-16戦闘機にまで及ぶ。
現在の契約先には米軍も含まれ、陸軍および空軍と計6000万ドル(約92億円)規模の契約を結んでいる。コマツやスウェーデンの大型トラック大手スカニアなど、トラック輸送や鉱業、建設機械を手がけるメーカーとも契約を結んでいる。ルートヴィヒは、「完全自動運転車はあと18カ月で実現可能だ」と主張するが、走行テストでは、同社の技術にまだ細部の粗さが残ることが確認できる。
「我々はAIに『見る・考える・行動する』能力を持たせるために莫大な投資をしてきた。いまやその技術を、さまざまな分野に移植できる。自動車でも、防衛用ドローンでも、人型ロボットでも、農業機械でも同じだ」とルートヴィヒは言う。彼によれば、「単一で柔軟なシステムを使えば、用途別に個別開発するよりもコストは抑えられる」という。
Appliedは現在、車両1台ごとにソフトウェア料金を課している。契約内容は相手ごとに異なるが、ステランティスのような大手メーカーであれば1台あたり100ドル(約2万円)超を支払う可能性がある。鉱山用トラックなど産業車両向けソフトは台数こそ少ないが、1台あたりの収益性はより高い。
歩行者との衝突リスクが比較的低い分野に展開し、自動運転車市場における将来的な優位性を築く
しかし、業界での存在感は強まっているものの、Appliedにはさまざまな競合がひしめいており、そこには車載ソフト大手QNXなどが含まれる。テスラはすでに数百万台の車両に運転支援機能を搭載しており、イーロン・マスクはそれを完全自動運転へと引き上げようとしている。ロボタクシー競争でテスラは、ウェイモに後れを取っているが、マスクの技術はAppliedよりも実地での検証実績が豊富だ。
現時点でAppliedの自動運転技術の顧客は日本のいすゞのみで、フォルクスワーゲンや日産といった長期顧客の一部は、モービルアイやWayve(ウェイブ)など同社競合と提携している。
ただ、たとえAppliedのソフトが今後数年で完成度を高めたとしても、規制当局の慎重姿勢や消費者の警戒感を考えれば、自動運転車が大規模に普及するのはなお先の話だ。そのためユーニスは、歩行者との衝突リスクが比較的低い分野に自律走行ソフトを展開することで、自動運転車市場において将来的な優位性を築こうとしている。鉱山用ダンプトラックや農業用コンバイン、無人巡視ボートなどがその例だ。ユーニスはこれを「徹底した実利主義」と呼ぶ。


