コンテンポラリーアートと高級ブランド財団のミュージアムが本当に釣り合っているのか──変化し続ける価値観を扱うアートに、恒久性や権威を象徴する「箱」はふさわしいのか。正直、この問い自体のスケールに私の意見が釣り合っているのか、という不安を感じてしまうのですが、今回はあえてこの「不安」を種にスタートしてみたいと思います。
まずいちアート鑑賞者として、高級ブランドが店舗に併設するアートスペースに足を踏み入れる際、いつも一種の「勇気」がいります。一般的な美術館やギャラリーへは、映画館やカフェへ行くのと同じ服装と心持ちで行くことができるのに、高級ブランドの「箱」となると、髪を整え、服のほつれをチェックし、入り口のドアマンに「展示を見に来たのです」とお伺いを立てないと、すっきりした気持ちで展示室へ向かえないのです。
一方で、店舗のアートスペースとは異なり、高級ブランド財団の大規模なミュージアムとなると、また別の複雑な気持ちを抱きます。いくら素晴らしい展示内容に感銘を受けても、ふと空間のスケールの大きさや、サインやチケットに印字されたブランド名が目に入ると、「私はこの場で何を感じるべきなんだろう」と、率直な感想や沸き起こった感情を一旦疑ってしまう自分がいます。
そんな私ですが、実は比較的気軽に立ち寄れる高級ブランドのアートスペースが2つあります。
一つ目は、銀座のメゾンエルメスです。2001年に竣工したガラスブロックの独創的な建物は、建築家レンゾ・ピアノによる設計で、この8階にアートスペース「ル・フォーラム」があります。
このスペースの特徴は、ガラスブロックにより劇的に変化する照明環境と、その変化や銀座という場所性と対話するような実験的な企画展であり、訪れるたびにその「化学反応」による特別な空気感に感動します。
しかし、それ以上に強く印象的なのは、その「民主化されたアクセス」です。この建築には地下コンコースへ直結したエスカレーターが備えられています。地下鉄を出るとそのまま小売フロアを通らずにアートスペースへ入ることができるので、そこで得た鑑賞体験を自然と受け入れられている気がします。


