アート

2026.02.19 10:15

高級ブランド財団におけるコンテポラリーアートへの違和感

ゲルハルト・リヒター展(Photo by Luc Castel/Getty Images)

こうした経緯と状況を踏まえて出かけた3つのミュージアムはどれも素晴らしかったです。もったいぶった批判などする気にもなれないです。

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カルティエ財団は劇場と同じく、床が大きく上下できるので展示空間が可変的であるとの新規性が注目の的ですが、ミュージアムの作品を鑑賞しながら道行く人も眺められ、かつ、道行く人も館内の人たちの様子をみることができる開放性に目を見張りました。

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展覧会として抜群に刺激されたのは、ルイ・ヴィトン財団におけるドイツ人作家、ゲルハルト・リヒター展です。1962年から2024年までの275点の作品を並べ、彼の人生と創作活動の軌跡が徹底して描き出されます。リヒターがあらゆることを多角的に掴もうとし、その結果、さまざまな表現様式と方法を駆使するに傾けたパワーには圧倒されます。特に、1973年、彼がヴェネツィア派のティツィアーノ(1490頃- 1576)の『受胎告知』の模写を起点に、新たな挑戦をはじめたプロセスには心躍りました。 

文句がつけようがない。実は、そこに一つの危惧をもちました。

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1980年代にはじまったラグジュアリーのビジネス化とも称すべきプロセスの演者に、コンテポラリーアートの作品を預け過ぎていないか? とふと思ったのでした。カルティエ財団などルーブル美術館の目の前です。これがセットになった風景は、これからも長く続くのだろうかと問うた時、たった10年そこいらの現象を信頼する気になれないのが正直なところです。

更に言うならば、コンテポラリーアートという揺らぎの大きい分野の作品をおさめる器が不釣り合いに立派過ぎないか、とも。もちろん、ルネサンス期の作品もあの時代においては、同じように見られていたかもしれません。しかしながら、あの時代は立派な教会や館をもつ発注主のところに作品をおさめるのが主体なわけですから、関係そのものに永続性など期待しなかったでしょう。

我々は何千年、何百年と生き残るアート作品がどのような運命を辿るか、少しは知っている時代を生きています。その経験と知恵をもってみたとき、高級ブランド財団のもつコンテポラリーアートをコアとしたミュージアムは、サイズとして適当なのか考えていくのは悪くないと思うのです。前澤さん、コンテポラリーアートとその作品をおさめる器について、どう考えますか?

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文=安西洋之(前半)・前澤知美(後半)

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