海には、塩分濃度や水温の違いによって層構造が存在している。その境界には微生物が集まり、ミネラルや有機物の分布にも差が生じる。満月や新月の強い潮流は、こうした層構造を揺り動かし、採取される海水の成分比に微細な違いをもたらす。ナトリウムや塩化物だけでなく、マグネシウムやカルシウム、微量元素のバランスが変われば、塩の味も変わるというわけだ。
精製され、画一化された塩の味ではなく、自然の営みのなかで生まれる塩の複雑な表情を味わうことで、さまざまなものが調和して生まれる美しさ、まさに「和える」を身体感覚を通じて感じることができる。その一口から、自然や他者と共に生きるということが、概念ではなくスッと身体に染み込んでいく。
食サミットで感じる小さくも大きな幸福
松嶋が食サミットを重ねてきた根底には、食が持つ「人と人、人と社会、人と地球をつなぐ力」への確信がある。
「食は、身体と心の健康であり、社会の健康にもつながります。非常に多くのものを内包し、つながりを生む、大切な存在です」
承認欲求や自己欲求のための食事も、確かに食の一側面ではある。しかし、そのあり方に傾きすぎることで、食が本来担ってきた、自然のリズムを感じること、他者と心あたたかな関係を築くこと、地球や社会の健康を育むという、根源的な営みから遠ざかってはいないだろうか。
四季を感じながら素材の成り立ちに思いを馳せ、よく噛んで食感を楽しみ、うまみを味わう。それらを大切な人々と分かち合い、心を重ねていく。毎日の「和やかな食卓」のなかに、すべてが詰まっている。その尊さに気づき、感謝しながら日々を過ごせるかどうか。それこそが人を良くする「食」の力であろう。そのように身近に寄り添ってくれている食が生み出す、小さくも大きな幸福に、食サミットは改めて気づかせてくれた。


